最高裁判事指名で公聴会、信頼性低いフォード氏の証言

アメリカ保守論壇 M・ティーセン

性的暴行、FBIが捜査終了

マーク・ティーセン

 トランプ大統領は2日のミシシッピ州での集会で、前週に上院司法委員会で証言したクリスティーン・フォード氏をからかい、「『ビールを一杯飲みました』『どうやって家に帰りましたか』『思い出せません』『どのようにしてそこに行ったのですか』『覚えていません』『そこはどこですか』『覚えていません』『何年前のことですか』…『それはどの辺りですか』『分かりません』『その家はどこにありましたか』『分かりません』『上の階ですか、下の階ですか』『分かりません。…ビールは飲みました』『覚えているのはそれだけです』」と言った。聴衆は大受けだった。

 トランプ氏は、こんなことをして何になると思っているのだろうか。喝采を送る聴衆は誰も、ブレット・カバノー氏が最高裁判事に承認されるかどうかに関して口を出す権限はない。カバノー氏の運命を決めるのは、一握りの人々だ。その中には、共和党のスーザン・コリンズ、リサ・マコースキー、ジェフ・フレーク上院議員らがいる。3人とも、トランプ氏の言動にショックを受けている。もっともだと思う。コリンズ氏は「大統領の発言は完全に間違っている」と言った。マコースキー氏は、「まったく不適切であり、私には受け入れられない」、フレーク氏は「政治集会でこのような微妙な問題について話すことは間違っている。正しいことではない」と述べた。

 3人は公正な議員であり、トランプ氏が毒づいても、その責任をカバノー氏に押し付けることはない。しかし、カバノー氏が今、一番してほしくないことは、きれいな女性を見ると「すぐにキスをする」と認めた男が、議論に入り込んでくることだ。カバノー氏の最高裁判事承認は、トランプ氏の実績になる。口を慎むべきだ。

 ◇共感呼んだ証言

 しかし、カバノー氏は、トランプ氏の行いに責任を持つ必要がないのと同様、社会の悪すべてに対して責任を持つ必要もない。多くの女性が性的な暴行を受け、そのほとんどが通報されていないのは確かだ。カバノー氏が、特権を持つ白人男性であるということだけで、性的暴行で有罪となるわけではない。高校のイヤーブックにばかなことを書き、大学で男子学生の社交クラブに入っていたからといって、性犯罪者となるわけではない。多くの米国人が認めているように、吐くほどビールを飲んだからといって、必ず記憶を失うわけではない。

 フォード氏は確かに、証人として共感を呼んだ。上院議員らには、フォード氏が自身の妻、姉妹、娘、友人のように見えたことだろう。だが、共感を呼んだからといって、言っていることが真実であるとか、信頼できるということにはならない。カバノー氏に対するフォード氏の訴えは、日ごとに信頼性を失っている。まず、アリゾナ州のレイチェル・ミッチェル検事は、フォード氏の証言に重要な矛盾があると指摘した。

 さらに「リアル・クリア・インベスティゲーションズ」が今週公表した報告で、公聴会での主張の重要部分の信頼性が失われた。フォード氏は宣誓をした上で、30年もたった2012年に性的暴行についてセラピストに話したのは、カリフォルニア州パロアルトの自宅のリフォーム中に「もう一つ玄関を設けることを要求し」、夫が反対したことが原因だと述べた。そしてフォード氏は、夫婦カウンセリングを受け、そこで「もう一つ玄関が欲しい理由を説明する中で、あの暴行について細かく説明を始めた」と証言した。民主党のダイアン・ファインスタイン上院議員に、もう一つの玄関を求めたのは「閉所恐怖症」のせいだったと認めた。また、リフォームがいつ行われたのかについては言及せず、カウンセリングと時期が一致するような印象を与えた。

 ◇宣誓証言と矛盾

 リアル・クリア・インベスティゲーションズが公表した不動産に関する記録、文書は、フォード氏の宣誓証言とは矛盾していた。それによると、「ドアは数年前に増築の一環として設置されており、賃借人や夫婦カウンセリングにも使われていた」。調査報告には、この調査に加わった弁護士の「二つ目の玄関の実際の計画は、別の部屋を貸し出すためだったようだ」という発言が記載されている。さらに、7月に建築許可を申請したカリフォルニア州サンタクルスの別荘には、玄関とテラスはあるが、二つ目の玄関はない。7月は、フォード氏がファインスタイン氏に暴行の件について知らせた時だ。

 証言のためにワシントンにまで行く理由、うそ発見器テストに詳しいこと、セラピストのメモが見つからないことに関する疑問と合わせて、この報告の記述でフォード氏の信頼性は損なわれた。

 連邦捜査局(FBI)は、カバノー氏の身辺調査のための追加捜査を終了した。上院議員らが、捜査を要求したのは正しかった。もっと早く実施されるべきだった。しかし、FBIが情報収集を行ったということは重要だ。捜査は、情報の信頼性について判断するためのものではない。それは上院の仕事だ。事実が感情に勝り、適正手続きが尊重され、有罪が証明されるまでは無罪とする原則が守られる。

(10月5日)