バイデン氏に党内から批判
アメリカ保守論壇 M・ティーセン
「礼節と譲り合い」擁護
ライバル候補が反発
一つ整理しておきたいことがある。バイデン前米副大統領は民主党の大統領候補指名争いで支持率トップに立っている。それは、「選挙で勝つ見込みのある」候補だからだろうか。
かつて差別主義者と協力したことを自覚していないバイデン氏は、2020年大統領選で民主党を勝利に導くことができるだろうか。
バイデン氏は、46年間、ワシントンで働いてきた。上院議員に初めて選出されたのは1972年。当時の民主党は今とは大分違っていた。
新人議員として党幹部らとうまくやっていく必要があった。その中には差別主義者、ジェームズ・イーストランド氏、ハーマン・タルマッジ氏もいた。
◇歩く失言マシン
ジェームズ・イーストランド氏、ハーマン・タルマッジ氏っていったい誰と思うかもしれないが、無理もない。米国に住んでいる人の99・9%は、その名前を忘れているか、聞いたこともないと思うはずだ。だがバイデン氏が、民主党の卑しむべき差別の過去から、この二人を思い起こさせることを決めた。
どうしてそのようなことをするのかと思うだろう。それは、バイデン氏自身が差別主義者だったからだ。バイデン氏は歩く失言マシンだ。言っていることはまるで意味をなしていなかった。基本的に意見が合わない人々とも、党派を超えて協力できると訴えたかったようだが、イーストランド、タルマッジ両氏は上院で、バイデン氏と同じ民主党の側にいた。
そこで、若く、知名度の低い民主党内のライバルらは、バイデン氏のこのミスにここぞとばかりに飛び付いた。
支持率が平均7・1%のカマラ・ハリス上院議員は、「(バイデン氏が)差別主義者への評価で甘いのは、ただの誤解からだが、間違っている。差別主義者らが好き勝手しているようなら、私は合衆国上院議員としてここに立っていない」と言い切った。2・3%のコリー・ブッカー上院議員は、「バイデン副大統領は差別主義者との関係を誇りに思っていても、それは、米国を安全で、黒人やすべての人々に対して寛大な国にするための手本にはならない」と断言。0・3%のブラシオ・ニューヨーク市長はツイッターで、バイデン氏は「ジェームズ・イーストランド氏に代表される古き良き『礼節』にあこがれているようだが、イーストランド氏は、私の多人種家族を違法にすべきだと考えていた人物だ」と指摘した。
だが、理性的な人なら、バイデン氏が差別を擁護し、差別に同情的だなどとは思わない。バイデン氏がしようとしていることは、差別ではなく、礼節と譲り合いの擁護だ。しかし、残念なことに今の民主党にとってそのようなことは大したこととはみられない。
バイデン氏は2月に、ペンス副大統領が「礼節をわきまえた人」だと発言し、謝罪を迫られた。数カ月後には、気候変動に対して、環境保護論者でもブルーカラーでも受け入れられるような中間的な立場を取ろうとして、撤回させられた。無党派のサンダース上院議員に「気候政策に『中間』などない」とかみ付かれると、すぐに「グリーン・ニューディール」への支持を表明した。
◇「中道」政策支持
今月には、40年前から支持してきた、中絶への公的資金の投入を禁止した「ハイド修正条項」への支持を撤回させられた。かつて自慢げに話していた中絶への「中道」政策支持を改めて表明し、民主党のライバル候補らから非難されたためだ。
さらにバイデン氏は、超党派の支持を受けた1994年犯罪法を支持したとして謝罪を迫られた。この法律は、民主党のクリントン大統領が署名し成立したが、民主党は今、アフリカ系米国人の大量投獄につながったと批判している。バイデン氏は今月に入って、刑事司法に関して「私は常に正しかったわけではない」と釈明した。
現在の民主党では「譲歩」「コンセンサス」は好ましくない言葉になっている。バイデン氏の問題は、隠れ差別主義者であることではなく、共和党やその他の政敵を憎んでいないことだ。18日には「今は、向こう側を見ると、敵にされる。反対派ではなく敵になる。話し合いはできなくなる」と述べた。これが、不器用なバイデン氏がしようとしていることだ。民主党内のライバルらはこの点で怒っている。
バイデン氏は1月に行った演説で、「きょうニューヨーク・タイムズで読んだ。私が大統領選に出馬すると、共和党が好きということが問題になると書かれていた。その通り。神様、私の罪を許したまえ」と述べた。これは、左派にとっては許しがたい罪のようだ。
(6月21日)






