中国への強硬姿勢は正しい
アメリカ保守論壇 M・ティーセン
貿易戦争は好景気の米有利
問題抱える中国経済
トランプ大統領が中国製品数十億ドル分に25%の関税を掛けると発表する前、意外なところから支持を受けていた。トランプ氏について批判ばかりしてきた民主党のシューマー上院院内総務が、トランプ大統領に対し「中国への圧力を弱めるな。後退するな。中国に勝つ唯一の方法は力だ」とツイートした。これは中国への警告だった。シューマー氏が、トランプ氏への支持を表明した時こそ、合意を交わすべき時だった。
しかし、中国はしなかった。今、その代価を払っている。トランプ氏が中国との貿易戦争を仕掛けたと言われることがあるが、それは間違っている。米国に経済戦争を仕掛けているのは中国だ。長年にわたり、米国の知的財産を奪い、外国企業が中国で事業をする条件として技術の移転を強制し、米企業が中国経済のさまざまな部門で競合しないよう国営企業に補助金を与えてきた。それは今も変わっていない。変わったのは、中国の指導者らが、米大統領の反撃に遭っているという点だ。
◇失業率は最低レベル
中国は、そこまでは予想していなかったようだ。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、中国の交渉担当者らは、「トランプ氏は、米経済の今後について懸念しており、合意へと傾く可能性が高い」と考えていた。大変な間違いだ。米経済は強い。失業率は50年間で最低レベルだ。賃金も上昇している。米経済が今抱える最大の問題は、職を求める人よりも、求人の方が多くなっていることだ。
それに対し中国経済は問題を抱えている。昨年の中国の経済成長率は、1990年以降で最低と報じられた。フィナンシャル・タイムズ紙によると、多くの専門家が「実際の景気はこの公式の数字よりも悪い」と考えている。トランプ氏が就任して以後、米国の製造業の雇用は約500万人増加したが、中国の製造部門の雇用は減少している。さらに中国は、出生率の低下とともに高齢化が急速に進んでいる。労働人口が減り、生産性が低下しているということだ。
米経済は中国よりも強い。だからこそトランプ氏は、この強い経済を生かして、中国との経済戦争で優位に立っている。トランプ氏は、米国の方が貿易戦争には強く、合意を必要としているのは米国よりも、中国であることを知っている。
トランプ氏は、中国が関税を「何千億ドル」も払うのだから、米経済にとって関税を掛けることはいいことだと言ったがこれは間違っている。そうして得た資金は、中国へ大豆が売れなくなり、打撃を受けた農家の支援に充てられる。中国が関税分を負担しているわけではない。負担しているのは、米企業と消費者だ。しかし、トランプ氏が、関税は米経済にとっていいと勘違いしていることを、中国は警戒すべきだ。トランプ氏は、中国とはウィン・ウィンの関係だと考えている。つまり、このチキンゲームでトランプ氏がひるむことはない。
関税の負担を中国が負うことはないといっても、米国の消費者への影響は、専門家が言っているほど悪くはない可能性がある。アメリカン・エンタープライズ政策研究所(AEI)の同僚、デレク・シザーズ氏が指摘したように、低インフレ率が、関税による価格上昇分のコスト負担を緩和しており、負担はいずれなくなる。シザーズ氏は「米国が中国からの輸入品すべてに25%の関税を掛け、それらの製品、サービスの代替が得られない場合、追加コストは1450億ドルになる。これは、2018年の消費支出の1%強に当たる」と指摘しながらも、「そのコストはそれほど高くなくなる。代わりとなる製品、サービスが出てくるからだ。このコストは、生産者が中国製品に代わる製品を見つけ、時間とともに減っていく」と予想している。
◇中国は経済的略奪者
言い換えれば、ダイナミックで、成長率が高く、低インフレの米経済は、中国との貿易戦争に対応できる。だがそれは、中国が簡単に折れるということではない。中国共産党は、国有企業を通じて経済を動かしている。大規模な部門への補助金を停止させ、米国の知的財産を盗み出すことをやめさせることは非常に難しい。トランプ氏は、世界貿易機関(WTO)に提訴しても、これらを実現できないことを知っている。だから、ここで強硬姿勢を取ることは正しい。
カナダや欧州連合(EU)へ貿易戦争を仕掛けるという考え方に疑問を持つのは容易だ。しかし、中国が経済的略奪者であり、それと戦うべきであるという点では一致できるはずだ。トランプ氏は、関税をてこに、中国に自由貿易と競争を受け入れさせようとしている。米国人は、中国との貿易戦争で大統領を支持すべきだ。シューマー氏がその手本だ。
(5月15日)











