サンダース氏がFOXに出演

アメリカ保守論壇 M・ティーセン

元支持者らにラブコール
トランプは裏切ったと非難

マーク・ティーセン

 

 サンダース上院議員(無所属、バーモント州)が15日夜、FOXニュースの市民集会に出演したことが民主党員の間で話題になっている。サンダース氏は、司会のブレット・ベイヤー、マーサ・マッカラム両氏に「この番組に出るべきでないと思っている人もいる。この局は、私が関わる世界では、必ずしも尊敬されているわけではないが、ここにきて、重要な問題について、真剣に話し合うことが重要だと思った」と話した。

 この一見、度量の大きな態度の背景には、大統領選への戦いを有利に進めるという計算がある。つまり、大統領選に勝つにはFOXの視聴者が必要ということだ。

 「共同議会選調査(CCES)」によると、予備選でサンダース氏に投票した有権者の12%が、2016年大統領選一般投票でドナルド・トランプ氏に票を投じた。これらのサンダース氏支持者らのおかげでトランプ氏は3州で勝利でき、大統領選に勝つことができたとみられている。

 市民集会が行われたベスレヘムがあるペンシルベニア州では、サンダース氏の支持者の約16%に当たる約11万7100人が、トランプ氏に投票した。トランプ氏は、4万4292票差でペンシルベニア州で勝利した。ウィスコンシン州でも状況は同じで、サンダース氏支持者の約9%、5万1317人がトランプ氏に投票、トランプ氏は2万2748票差で勝利した。ミシガン州では約8%、4万7915人がトランプ氏に投票、1万704票差で勝利した。

◇コラムに投稿も

 サンダース氏が民主党の候補者指名を獲得するには、予備選で、トランプ氏に投票したこれらの有権者の支持を得る必要がある。さらに、指名獲得後も支持を続けさせ、20年の選挙でトランプ氏ではなく、自身に投票させる必要がある。

 サンダース氏はこれらの元支持者らをトランプ氏から引き離すことができるだろうか。FOXに行って、トランプ氏はあなた方の期待を裏切ったと訴えることは、確かに賢いやり方だ。サンダース氏はFOXの市民集会に参加しただけでなく、FOXのサイトにコラムを投稿し、この宣言した。「ドナルド・トランプ氏は大統領選に出馬した時、勤労者世帯にさまざまな約束をした。勤労者世帯の利益を守り、エスタブリッシュメントに立ち向かうと言った。残念ながら、そうはならなかった」

 市民集会でサンダース氏は、メディケア(高齢者・障害者向け医療保険)の8450億ドル削減を提案しているとトランプ氏を非難、「メディケア・フォー・オール(全国民に医療保険を)」計画について熱く語った。FOXの番組で、医療保険を政府が引き受けることを主張することには違和感がある。

 しかし、16年の選挙でトランプ氏に乗り換えた有権者の多くは、従来の共和党支持者とは違い、トランプ氏が社会保障とメディケアには手を付けないと約束したことを理由にトランプ氏を支持した。そのため、保守派を嫌っていても、メディケア・フォー・オールに対する拒否感はそれほど強くない。ベイヤー氏が市民集会参加者らに、勤務先の医療保険から、サンダース氏が推進する国営の医療保険へ移行することに前向きかどうかについて、挙手で答えるよう求めると、サンダース氏支持者らから歓声が上がり、多くの人が手を挙げた。

◇好調な国内経済

 サンダース氏が支持者を取り戻す上で最大の問題は、トランプ氏が、これらの見捨てられた米国民への約束を守っているということだ。トランプ氏が就任して以降、製造業の雇用は49万1000人増えた。ほぼ四半世紀で最も速いペースだ。

 ウォール・ストリート・ジャーナルは、「高校中退者の失業率は昨年、5%に低下した。このグループの昨年の平均週給額は6%以上上昇し、他のどのグループよりも高率だ」と報じた。マッカラム氏は、ペンシルベニア州の失業率は下がり、賃金は6・6%上昇しているとサンダース氏に指摘し、「このように好調な中で、あなたが支持を取り戻したいと思っているこの地域の人々に、乗り換えて、あなたを支持するようどう説得するのか」と質問した。

 核心をついた質問だ。サンダース氏は、これはトランプ氏の実績ではなく、オバマ政権時に始まっていたことであり、世界的な経済回復とトランプ氏の減税による恩恵の大部分は、富裕層が享受し、共和党は、勤労者世帯に医療保険と「生活できる賃金」を与えることを拒否していると答えた。サンダース氏が元支持者に言いたいことはまとめると次のようになる。トランプ氏はあなた方を裏切ったが、私はもっとうまくできる、トランプ氏は自身はアウトサイダーだと主張するが、私は本物だ。

 効果はあるだろうか。トランプ氏のホワイトハウス入りを支援したサンダース氏の元支持者らは、トランプ氏支持を続けるのか、初恋の相手サンダース氏の元に戻るのか。その答えは、民主党の候補者指名を誰が獲得し、20年大統領選で誰が勝つかで分かる。

(4月17日)