新社会主義に支配される民主
アメリカ保守論壇 M・ティーセン
富裕層への増税提案
非現実的な気候変動政策
オカシオコルテス下院議員は気候変動政策「グリーン・ニュー・ディール(GND)」をめぐりとんでもない主張をしている。これは、今の民主党が新社会主義に支配されていることを如実に物語っている。意図したことではないにせよ、民主党の現状そのままだ。
同氏の事務所はGNDに関する「FAQ(よくある質問)」を公共ラジオ(NPR)、ワシントン・ポストなどの報道機関に送り、同様の文書を議会の自身のサイトに掲載した。これが激しく非難されると、文書を撤回、自身の事務所が作成し、サイトに掲載し、配布した文書でありながら、自分は知らないと主張した。
だが、そんなことをしても無意味だ。GNDの背景に何があるかについては、オカシオコルテス氏がすでに話している。同氏も、この計画を承認した民主党も、これでやっていくしかない。
オカシオコルテス氏は、「ガスを出す牛と飛行機をなくし」、「米国内のすべての建物」を改良または建て直し、「燃焼を伴うすべてのエンジン」を交換し、「働く意欲のない」人々の「経済的安全」を保障するという計画を提案し、やり玉に挙げられた。
当然だ。完全な社会主義を目指すこの提案と比べれば、旧ソ連の5カ年計画ですら控えめのものに見える。
◇限界税率70%提案
しかし、ここで重要なのは、富裕層に課税するだけではこれらすべてを賄うことができないことをオカシオコルテス氏自身が認めているという点だ。民主党のウォーレン上院議員は大統領選への出馬を表明し、富裕税を主張している。
一方のオカシオコルテス氏は、富裕層への限界税率70%を提案した。その意味ははっきりしている。百万長者、億万長者、豊富な資金を持つ大企業からふんだくれば、無料にできるよ、ということだ。
トーンダウンした案がサイトに掲載されたとはいえ、それでもGNDのコストのすべてをカバーするには至っていないことは明らかだ。
提案では「大規模な投資が必要になる」とされている。「すべての富裕層と豊かな企業が束になって、自由に使える資金をすべてここに投じたとしても、まだ十分ではない」。GNDを達成するには、国内総生産(GDP)の40~50%という、第2次大戦時並みの資金が必要になることをオカシオコルテス氏自身、提案の中で認めている。
現在の連邦政府支出は、GDPの21%を占める。年間4兆4000億㌦だ。それを40~50%に増額するには、政府支出を2倍にし、10年間で84兆~105兆㌦とする必要がある。この数字には、その間のGDPの増分は盛り込まれていない。ウォーレン氏の富裕税で調達できるのは、10年間で2兆7500億㌦にすぎない。超党派の「タックス・ファウンデーション」によると、限界税率70%で調達できるのは、10年間で多くとも1890億㌦で、経済成長が圧迫され、資本の逃避が進むことによる歳入減は年間で635億㌦に達する可能性がある。
◇最低で46兆㌦必要
富裕層への課税では、GNDの費用をカバーできない。その中には、気候変動とは無関係の社会主義的政策も多く盛り込まれている。
マンハッタン研究所の財務専門家ブライアン・リードゥル氏がリベラル、無党派からの情報に基づいて行った試算によると、大変な額になることが分かる。医療保険の単一支払者制度に32兆㌦、政府の雇用保障に6兆8000億㌦、教育、傷病休暇、職業訓練、退職後の保障に2兆㌦、働く「意欲のない」人々を支援するための最低所得保障に5兆~40兆㌦といった具合だ。総額で46兆㌦から81兆㌦に上る。
この試算の最低額を満たす歳入を確保するには、欧州型の付加価値税をすべての商品に87%掛けるか、全国民に新たに37%の給与税を課すしかない。この給与税は、現在の15・3%の給与税とすべての連邦・州・地方税に上乗せされる。
しかもこれは、GNDのエネルギー・環境政策に取り掛かる前の費用しかカバーしていない。燃焼エンジンを使うすべての自動車を交換し、米国の全域に高速鉄道を敷設し、すべての建物を改良または建て替えるための費用を正確に計算することはほぼ不可能だ。数百兆㌦になる。これを賄うのは事実上不可能だ。そもそも国民はそんなことを望んでいない。カイザー・ファミリー財団の最新の調査によると、56%が「全国民にメディケアを」を支持するが、増税が必要になることを知ると60%が反対となる。
オカシオコルテス氏はFAQでうかつにも、ただでもらえるという新社会主義のうそを白日の下にさらした。民主党がこのうそを擁護すれば、トランプ大統領は再選される。