米史上最も誠実な大統領か

アメリカ保守論壇 M・ティーセン

トランプ氏、公約を次々実行
うそや事実の歪曲も

マーク・ティーセン

 トランプ大統領は、米国近代史上、最も誠実な大統領として記憶されるかもしれない。

 誤解しないでほしい。トランプ氏は四六時中うそをついている。「米国史上、最大の減税と税制改革を行った」と言ったが、実際には8位だった。

 「米国経済は史上最も強い」と言った。いつかなるかもしれないが、まだなっていない。ニューヨーク流ということもあるのだろうか。ここではすべてが最大で最高になる。

 しかし、大統領としての誠意、つまり公約の順守ということに関してトランプ氏はまさにお手本というべきだ。良くもあしくも、大統領就任以降、公約をそのごとく実行してきた。

 イスラエルの米大使館をテルアビブからエルサレムに移転した。3人の前任者は移転を約束したが、実行しなかった。「『イスラム国』(IS)を殲滅(せんめつ)する」と約束し、2年後、ISのカリフ制国家のほとんどを排除した。テロの脅威となる可能性があると判断した国に入国禁止の措置を取ると約束し、最初は障害もあったが、最終的には最高裁で承認された。シリアが化学兵器を自国民に使用すれば罰すると約束し、前任者とは違い、実行した。しかも2度もだ。

 「(アントニン・)スカリアに似た」最高裁判事を指名すると約束し、現在、ニール・ゴーサッチ、ブレット・カバノー両氏が判事に就任している。連邦高裁に若い、保守派の判事を入れると約束し、これまでに29人が上院で承認された。近年の大統領の就任後のこの時期としては最も多い。

◇歴史的な税制改革も

 歴史的な税制改革を実行すると約束し、過去30年で初めての大規模改革を承認した。かつてない規模の規制緩和を行い、そのために新たな規制が一つできるたびに二つの規制を撤廃すると約束した。最初の1年で、生涯規制コストを81億㌦削減し、今年はさらに98億㌦削減される見込みだ。

 選挙戦中、アフリカ系米国人有権者に対して「失うものなどない。…私が解決する。仕事を取り戻す。活気を取り戻す」と言った。トランプ政権下で、アフリカ系米国人の失業率は過去最低となった。あまり知られていないが税制改革には、予算不足に苦しむ町々や都市部のコミュニティーを活性化させるための「機会ゾーン」を設ける条項が盛り込まれている。

 トランプ氏は、オバマ政権の「クリーン・パワー・プラン」を廃止し、「パリ協定」からの離脱を宣言し、パイプライン「キーストーンXL」「ダコタ・アクセス」を承認し、北極圏国立野生生物保護区(ANWR)の資源調査を許可した。これらの公約すべてを実行した。

 貿易に関しては、環太平洋連携協定(TPP)から離脱し、鉄鋼とアルミニウムに関税を課すという約束を実行した。北米自由貿易協定(NAFTA)と米韓自由貿易協定の再交渉を約束し、メキシコ、カナダ、韓国と新たな合意を交わした。中国に関税を課して、市場を開放させ、知的財産権の侵害を止めさせることを約束し、現在、実行中だ。トランプ氏の貿易政策がどうであろうと、言ったことをそのごとく実行している。

 国防費のかつてない規模の増額を約束し、実行した。製造業の雇用を取り戻すと約束した。過去20年で最も速いペースで雇用は増加している。死に瀕(ひん)した患者が実験的な治療を受けることを認める「ライト・トゥー・トライ」法の署名を約束し、実行した。医療用麻薬オピオイドの問題に取り組むことを約束し、間もなく、超党派のオピオイド包括法案に署名する。

◇目玉公約は実現せず

 壁の建設や医療保険制度オバマケアなど、守られていない公約もあるが、実施しようとしなかったわけではない。ごく一部で、公約を撤回した例もある。アフガニスタンからの米軍の完全撤収の公約が間違っていたと認めたことがその一例だ。私はこれでよかったと思っている。

 しかし、誰が受け入れ、誰が受け入れないかは問題ではない。トランプ氏が何かすると言えば、確かにそうなるということだ。つまり、トランプ氏は公約のためなら、事実をも勝手に捻(ね)じ曲げる。前任者と違い、政権の目玉公約を実行せず、「今の医療保険がいいのなら、続ければいい」とうそぶいた。これは、過去最大の税制改革を実行したと大言壮語するよりもっと悪い。

 トランプ氏が最初の2年で、かつてないほどの公約を実現したことは事実だ。トランプ氏は恐らく、歴史上最高というだろう。だが、実際にそうなるかどうかはまだ分からない。

(10月12日)