中小企業こそインターンを

エルドリッヂ研究所代表・政治学博士 ロバート・D・エルドリッヂ

人材確保の最良の方法
後継者不足による倒産回避へ

ロバート・D・エルドリッヂ

エルドリッヂ研究所代表・政治学博士
ロバート・D・エルドリッヂ

 近年、日本でインターンシップが増え、その内容や機会が拡大している。リクルート社がまとめた「就職白書2018」によると、2017年度中、日本の会社の68・1%がインターンシップを実施した。前年度比で8・7ポイント増えた。さらに18年度は、73・7%に上昇することが見込まれる。

参加学生の5割が入社

 企業の25・6%は、将来の従業員の候補者を選定する方法としてインターンシップを使用した。47・5%は「インターンシップに特にはっきりとした目的はなかったが、最終的には一部の参加者が採用された」と述べている。また、企業の73・6%が、自社主催のインターンシップに参加した卒業生を採用したという。インターンシップは企業にとって優秀な人材を確保する素晴らしい方法であることを示唆している。

 また、同じ調査によると、18年3月卒の学生のうち、55・2%がインターンシップに参加した。前年度比で11・5ポイントの増加だ。さらに、参加した学生の51%以上は、インターン先の企業か同業種の会社に入ったという。

 参考までに、米国では企業の約97%がインターンシップを提供し、学生の8割が参加している。

 日本では、ほとんどのインターンシップは、従業員300人から5000人規模の大きな会社で行われている。さらに、インターンシップの期間は非常に短い。報告書によると、その半分以上はわずか1日で終わる。つまり、ゲストや来客扱いで、会社の見学、従業員や幹部と直接に話し、模擬的な仕事やディスカッションに参加する程度なのだ。

 非常に表面的で決められた方法で大きな企業や組織のインターンを経験することは、将来のキャリアや就職先を選択するにはあまりいい方法ではない。間違いなくその企業にとっても良くない。親や祖父母の世代とは異なり、今は短期間で辞める新入社員が増えているからだ。

 教育の観点から、また、ふさわしい職場を見つけるという観点からも、中小企業にもっとインターンシップを提供してほしい。特に、後継者がいない中小企業こそが、インターンシップを含め、将来会社を引き継がせる機会を提供することを提案したい。中小企業は、インターンシップの機会をあまり提供していないが、実施すれば最も利益を得ることができると考えられる。

 毎年、何千もの中小企業が閉鎖または破産申請している。19年には、前年比でほぼ2ポイント増の8383社が破産した。消費税増税の影響もあろう。国内外の経済を荒廃させたコロナウイルス(COVID―19)の経済的影響により、昨年の何十、何百倍もの企業が今後倒産していく可能性がある。

 倒産した企業のかなりの数は、後継者不足が原因だ。筆者が以前住んでおり、今でも関係を持っているある小さな町では、19年度に地元の商工会議所から脱退した30社の半数以上(18社)が、後継者がいない、または将来性がないと考えた企業だった。

 日々の意思決定を次世代に早期にバトンタッチする会社は生き残り、繁栄する可能性が高いと言われている。若い世代は、最新の技術とトレンドに精通しており、最新の高等教育や高度な教育を受けている。彼らはまた、学際的な思考の持ち主であり、異なる業界や製品を融合させ、新旧のものから必要なものを選び取ることができる。

 今日の学生は、自分たちの声をより迅速に届けるために、中小企業でのインターンを検討した方がいいと思う。プロジェクトを立ち上げたり、現在のデザインや製品の改善を提案したりするよう求められるかもしれない。

若者が会社の救世主に

 彼らがインターンシップに長く残れば残るほど、会社の経営者または創設者との間で信頼関係が生まれる。大企業で多数の中の一人として扱われるのではなく、小さな環境で会社にとっての救世主になれるかもしれない。

 若者がこれらの中小企業に目を向けるべきもう一つの理由がある。新型コロナの感染拡大とそれがもたらす経済的混乱が、卒業する学生の内定取り消し、就職フェアや面接の延期、インターンシップの延期または中止につながっている。これはとても残念なことだ。しかし、若者が地元の中小企業でインターンを経験するいい機会になるかもしれない。テクノロジーに精通している若者が、「テレワーク」というスタイルで働くケースもますます拡大していくはずだ。