【社説】12月の日銀短観 原材料高騰の影響が心配だ


日本銀行本店と新館

オミクロン株への懸念も

 大企業の景況感は、非製造業で大幅に改善した一方で、製造業は5四半期続いていた改善がストップ。先行きはいずれも、原材料価格の高騰を背景に悪化を見込む。

 新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の出現もあり、景気の先行きは予断を許さない状況になっている。

 12月の日銀全国企業短期経済観測調査(短観)によると、企業の景況感を示す業況判断は、大企業製造業で横ばいとなり、昨年9月調査から5四半期続いてきた改善が一服した。

 東南アジアでのコロナ感染拡大に伴う部品調達の遅れで、自動車が大幅減産を余儀なくされ、その影響が幅広い業種に波及。原油や原材料価格の高騰により、企業のコスト負担が増したことも響いた。

 一方、非製造業は緊急事態宣言が10月から全面的に解除されたことで、多くの業種で景況感が持ち直した。宿泊・飲食サービスの業況判断指数(DI)は、前回9月調査のマイナス74からマイナス50へ、ゴルフ場や遊園地などの対個人サービスもマイナス45からマイナス9へと、マイナス幅を大幅に縮小させ、小売はプラスに転じた。

 ただ先行きについては慎重な見方が根強く、依然として楽観はできない。原材料価格の高騰などを背景に、大企業製造業、同非製造業とも悪化を見込んでいるからだ。そこに、感染力が強いとされるオミクロン株の登場である。

 今回の調査期間は11月10日から12月10日で、8割弱が11月29日までに回答している。オミクロン株の影響が十分に織り込まれてはいないため、企業心理は調査後に悪化している可能性がある。

 オミクロン株は感染力は強いが、毒性は強くなく重症者は少ないとの研究報告が海外から伝わる。しかし、英国からは死者が出たとの報道がなされ、楽観はできない。

 景況感の改善が進む非製造業だが、コロナ禍が深刻化する前の2年前と比べると、年末年始の国内旅行では6割程度の水準といい、海外旅行では旅客需要の回復が遅れそうである。

 さらに気になるのが、原材料高の影響である。11月の企業物価指数は前年同月比9・0%上昇と、比較可能な1981年以降で最大の伸びを記録。今回の短観でも、仕入れ価格が「上昇」と答えた企業の割合から「下落」を引いた判断指数は、製造業で約13年ぶりの高さとなった。

 自社の販売価格の判断指数も「上昇」割合の超過幅が約41年ぶりの高水準になった。依然として仕入れ価格の上昇の程度が大きいようで、販売価格にコストを十分転嫁できなければ企業収益を圧迫する恐れがある。

 一方、販売価格の上昇は個人消費を冷え込ませかねない。現に、来年に生活関連商品を値上げすると発表する企業が相次ぐ。この点からも、景気の先行きには不安が消えない。

成長基盤整える対策を

 経済対策は不透明な景気を下支えし、経済を再生するとともに、成長の基盤を整えるためのものである。国会は実のある諸対策の決定に努めてほしい。