【社説】みずほ銀行 企業風土改革が大きな課題
金融庁は、みずほ銀行で相次いで発生したシステム障害を受け、同行とみずほフィナンシャルグループ(FG)に対し、9月に続く今年2度目の業務改善命令を出した。
システム障害で改善命令
みずほ銀では2月から9月にかけ、計8回のシステム障害が発生。特に2月の1回目は、定期預金口座のデータを移行する作業中に障害が生じ、全国の現金自動預払機(ATM)の8割が利用できなくなった。この時は、ATMからキャッシュカードや通帳を取り出せないなどのトラブルが起きただけでなく、顧客が長時間にわたって店頭で待たされるなど対応の遅れが問題視された。
改善命令では、社会インフラを担う金融機関としての役割を十分に果たせなかっただけでなく、日本の決済システムへの信頼性を損ねたとし、経営陣の責任は重大だと指摘。障害が相次いだ背景に、システムに関するリスクや現場の実態を軽視し、保守や運用に必要な人員を配置転換したり、費用を削減したりして、運営態勢を弱体化させたことがあるとしている。
さらに2002年と11年にも発生した大規模障害の教訓を生かさず、「自浄作用が十分に機能しているとは認められない」と断じた。こうした指摘を、みずほは深刻に受け止めなければならない。
金融庁は再発防止策や企業風土の抜本的な改革を盛り込んだ業務改善計画を来年1月までに提出するよう命じた。企業風土の改革は、みずほにとって大きな課題だと言える。
今年6月に公表された第三者委員会の調査報告書では、みずほで繰り返されてきた大規模障害の根底に「経営陣以下のシステムリスクに対する感度の低さがある」と明記。顧客への対応についても「有事の対応で顧客利益に配慮する姿勢が足りなかった」と断じた。
また、組織の危機対応力、ITシステム統制力、顧客目線のいずれでも弱さがあると指摘。背景に「積極的に声を上げることで、かえって責任問題となる」という「体質や企業風土」があると分析した。
今回の処分を受け、みずほFGの坂井辰史社長とみずほ銀の藤原弘治頭取が来年4月1日付で引責辞任する。佐藤康博FG会長も4月1日付で会長職を退き、6月下旬に取締役を退任するという。メガバンクの経営トップ3人が一斉に退く異例の事態である。
みずほは強い危機意識を持って経営を刷新しなければならない。これを機に、顧客目線に立った風通しの良い組織をつくれるかが問われる。
資金洗浄への対策強化を
金融庁の業務改善命令とは別に、みずほ銀が今年9月の8回目の障害発生時に、送金相手がマネーロンダリング(資金洗浄)に関係しているかどうかを確認せずに海外送金を行ったとして、財務省が外為法に基づく是正措置を命じた。
資金洗浄はテロ資金供与に利用される恐れがあり、政府は対策強化を進めている。みずほ銀の行為は日本の国際的な信頼を損ないかねず、再発防止を徹底すべきだ。
(サムネイル画像:Wikipediaより)