「新たな全体主義」から子供を守れ

麗澤大学大学院特任教授 高橋 史朗

国連利用する左派NGO
人権振りかざし過激な性教育

麗澤大学大学院特任教授 高橋 史朗

 9月に発足した「こども政策の推進に係る有識者会議」の座長や構成員は概(おおむ)ね重厚な人事といえるが、配布資料には懸念される内容も含まれており、日教組や「過激な性教育」運動団体などの独善的な主張が国連のお墨付きを利用して持ち込まれる危険性がある。

 国連勧告は本来“recommendation(推奨)”にすぎず、法的拘束力はないが、反日左派のNGO団体と国連の委員会との予備調査(非公開の密室審議)に基づく勧告を受けた政府は政策の改善を求められ、その達成度を反日左派のNGO団体が詳細にわたって厳しく評価した「追加情報」が国連の委員会に提出され、それに基づいて「本審査」が行われる仕組みになっている。

“自作自演”のお墨付き”

 「従軍慰安婦」や「強制連行」「性奴隷」「ヘイトスピーチ」「体罰禁止」「性的指向及び性別認識(LGBTI)差別」「部落・アイヌ・琉球・在日朝鮮人差別」「女性のクオータ制」問題などは悉(ことごと)く左派NGO団体の主張を国連に持ち込んで、“自作自演”の国連勧告のお墨付きを利用して進められてきたものである。

 同団体の要である「子どもの権利条約NGOレポート連絡会議」が中核となった「広げよう!子どもの権利条約キャンペーン」が主催する院内集会が、国会議員連盟の後援の下に2回開催されている。主催団体の中心的役割を担っているのは、子どもの権利条約ネットワーク(喜多明人代表)と同条約総合研究所(荒牧重人代表)で、共同代表にはこの2人と「子ども基本法」研究会の中心メンバーでもある甲斐田万智子氏が就任している。

 院内集会では、国連子どもの権利委員会の大谷美紀子委員が、国連が勧告した子ども基本法・こども庁・子どもコミッショナーの三課題をセットで実現しようと訴えている。この左派の運動団体と自民党議員中心の国会議員連盟と国連子どもの権利委員会が一体となって、左派NGO団体が提唱して国連勧告に反映させたこの三大課題を推進するという伏魔殿的な構図が浮き彫りになった。

 気になるのは、「学校から影響を受けない立場の人権専門家を配置する」などの、左派の運動に都合のいい「子どもの提言」が、子供の権利を守る仕組みとして提案されていることである。

 この左派NGO団体が国連に持ち込んだ意見書には、「教職員による管理職の勤務評定制度」や権利条約に「逆行」する改正教育基本法、権利条約第14条の「思想・良心の自由」を侵害する可能性が危惧される道徳教育、子供の「保護」に偏重している「青少年健全育成」施策を全面的に否定する見解が明記されている。

 安倍政権下の「教育再生」政策を真っ向から否定する左派の運動団体と連携した集会が衆議院議員会館で開催され、四つの国会議員連盟が後援している事実が事態の深刻さを物語っている。

 かつて児童の権利条約を歪曲(わいきょく)し拡大解釈をして教育現場を大混乱させた人々と“野合”することは、立憲民主党と共産党の野合よりも醜悪である。

 ドイツの社会学者のガブリエラ・クビー『グローバル性革命』が解明した文化マルクス主義思想に基づく「包括的性教育」の必要性が、第1回「こども政策の推進に係る有識者会議」で強調されている点も見過ごせない。

 「包括的性教育」の効果として、「コンドームの使用の増加」「避妊具の使用の増加」などを挙げ、年齢別学習目標として、5~8歳時に「赤ちゃんがどこから来るのか説明」し、9~12歳時に「避妊方法の確認」を行うとしている。

社会構造の解体に狙い

 「政府・文科省が強引に進める道徳教育の目的と内容に真っ向から対抗するのが性教育である。道徳教育と性教育とは相容(い)れない目的と内容がある」と『包括的性教育』(大月書店)に明記している浅井春夫氏が代表幹事の「過激な性教育」団体が推進する「包括的性教育」に賛成する中高生の声を同会議の配布資料に掲載している点も看過できない。

 クビーによれば、「ジェンダー主流化」イデオロギーが「新たな衣を着て、歪曲された自由、寛容、正義、平等、差別禁止、多様性という名の殻をかぶって再登場している」「グローバル性革命の核心は性規範と社会構造の解体」にあるという。子供の人権を振りかざした「新たな全体主義」の脅威から子供たちを守らねばならない。詳しくは、拙著『「こども庁」問題Q&A』(歴史認識問題研究会発行)参照。

(たかはし・しろう)