民心から程遠い保守政党の必然


4度の全国選挙で同じ失敗

 韓国の保守が先の総選挙で惨敗した。民主化した87年の憲法改正後、与野党間の最大の票差だ。一言で言うと未来統合党は嶺南(半島東南部=釜山・慶尚南北道など)地域の保守政党に落ちぶれた。

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 すでに常識になったが、確固たる保守層30%と確固たる進歩層30%を除いて、今回の総選挙の核心は最大40%に達する無党派を相手に行われた戦争だった。この40%の浮動票はまた二つの20%に分かれる。一つは“消極的浮動票”として情報収集に消極的で、天気や気分によって投票者の心が左右されたり、何よりも投票自体を放棄する場合が多い。もう一方の20%は“積極的浮動票”だが、彼らは政権側の失政はもちろん、野党の役割と能力にも注目する。自分の票が死票にならないように神経を尖(とが)らせ、関連した各種情報を集めるのに忙しい。

 結局、未来統合党は“積極的浮動票”20%をめぐって共に民主党と繰り広げた戦闘で力なく敗北したのだ。

黄教安代表

15日、ソウルで総選挙の惨敗を受けて辞意を表明する韓国最大野党「未来統合党」の黄教安代表(EPA時事)

 健全な保守の再建のために問題を一つだけ提起したい。保守はなぜ失敗から教訓を得ることができないか。保守陣営は過去4度の全国規模の選挙で同じ失敗を繰り返した。16年総選挙で野党の民主党は予想を覆して勝利したが、保守はその時、何を修正し反省すべきかを悟るべきだった。しかし選挙直後、民心とは違って大統領側近だった李貞鉉議員を党代表に選んだ。

 17年大統領選挙の敗北後、同年7月に自由韓国党と看板をかけ替えた保守は大統領選で敗れた洪準杓元議員を党代表に選んだ。彼の明快な論理が魅力的な時もあるが、やはり民心とは違っていた。18年の地方選挙敗北後も黄教安元総理がリーダーに選ばれた。「なぜ、わざわざ朴槿恵政府の総理を」という疑念を持ったのは筆者だけではなかったはずだ。こんなことが積み重なって、保守と一般大衆との隙間はより一層広がって行ったのだ。

 そして決定的に、今回の21代総選挙でも未来統合党は同じ失敗を繰り返した。 身を削る努力もなく、自由右派が国を救うという根拠なき信仰を持ってはならない。ユーチューブに飛び交う不確かな情報を受け売りせず、有権者の心をつかめないことを他人のせいにもするな。

 国を理念戦争の場にしてしまった現政権の責任がいくら大きいとはいえ、また、道徳的優位と歴史的正当性は自分たちの占有物だという傲慢(ごうまん)と独善がいくら度過ぎているといっても、彼らを詰ってはならない。文在寅政権の失政と独善がそっくりそのまま野党支持にはつながらないという事実を骨身にしみて実感したはずだから。

 どうせ下落するならどん底に落ちた方がいい。それでこそ地を蹴って跳躍できる。韓国の保守は無条件に変化し反省すべきだ。

(朴仁煇(パクインフィ)梨花女子大教授、4月20日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。

ポイント解説

“意識高い系”を取れなかった保守

 あれほど失政・失点の多い文在寅政権なのに、どうして与党が大勝利するのか、理解しがたいが、理由は単純だった。野党が弱いからである。記事にもあるように進歩支持層が30%、保守支持層が30%。これが夫々の「岩盤」である。特に文大統領支持者を「頭壊文」(頭が割れても文在寅支持)と言われる“文派”が引っ張っている。

 だが、その一方で30%も保守支持層がいるというのが驚きだ。もっとも、記事は「嶺南地域の保守政党に落ちぶれた」と手厳しい。実際に嶺南=慶尚道で主に議席を得ているのを見れば、その指摘もうなずける。

 無党派40%、その中でも“意識高い系”の20%が勝敗を分けたという分析は納得である。彼らをつかめなかったことが保守野党の敗因だと。

 だが、つかめなかった理由について朴教授は保守党のリーダーシップ観にあるとだけ分析しているが、この点は物足りない。確かに党が生まれ変わらなければならない時に「昔の名前」が出てきては、何を変えようとしているのかが分からなくなる。あるいは人材不足が露呈しただけなのか。それならなぜ人材が集まらないのか、その点の分析が欲しいところだ。

 もう一点、コロナでかき消されたが、文政権3年をみれば「従北親中、反日離米」路線は明らか。「文岩盤」は除くとして韓国民は本当にこの路線でいいのか、この本質的な部分を“意識高い系”20%は納得して与党を選んだのか。文政権の正体が巧妙に隠されたまま、野党の体たらくもあり、与党の大勝利を許した。

(岩崎 哲)