【韓国紙】韓日関係の改善は慎重姿勢で臨め


韓国紙セゲイルボ

協力可能分野で実績挙げよ

韓国の尹錫悦次期大統領10日、ソウル(AFP時事)

 尹錫悦(ユンソンニョル)大統領当選者の登場を契機に韓国・日本関係改善の可能性が探られている雰囲気だ。だが、尹当選者は韓日関係を扱うに当たって、“石橋も叩(たた)いて渡る”気持ちで、くれぐれも慎重な姿勢で臨まなければならない。

 昨今の韓日関係はもつれにもつれた糸を一刀で切り捨てる快刀乱麻式の方法では解決できない状況だ。一つの政権、政府次元の選択によって造成された対立ではないためだ。韓日は国際環境の変化、両国の力学関係の変化が引き起こした構造的対峙(たいじ)を抱えている。日本政府が「納得できる解決法を韓国が提示せよ」としている強制動員被害者賠償問題の解決法からして簡単ではない。同問題は日帝強制支配が不法か合法かが衝突する、韓日関係の根本問題を扱う事案だ。現金化の現実化という時限爆弾の爆発時点が近づいているが、日本側の無誠意で解決方法を見いだせないでいる。

 岸田文雄首相は尹氏との通話でも「健全な韓日関係」の復元を改めて強調した。“健全な”とは結局、日本側の主張が貫徹された関係を意味する。これに2015年の岸田首相が外相在任時に妥結した日本軍慰安婦合意に加え、韓国に対する日本政府の輸出規制とホワイトリスト(輸出手続き優待国)除外、福島第1原発汚染水の海洋放出、福島など日本産水産物の輸入規制、佐渡金山のユネスコ世界文化遺産推進などの韓日世論を爆発させる地雷が敷かれている。

 尹氏は大統領選の過程で積極的に否定したにもかかわらず、韓半島有事の際の自衛隊進入を許容したとの論議で大変な目にあったことを忘れてはならない。特に尹錫悦政権は辛勝政権であり、与小野大(少数与党・多数野党)政権だ。韓日関係で国民感情に逆行する急発進を行えば、李明博(イミョンバク)政権初期の狂牛病事態が再演されないとも限らない。7月の参議院選挙後には日本も韓国により柔軟に出てくることができるというバラ色の展望もあまり信じすぎてはならない。

 自民党政権を掌握して、岸田首相を包囲した安倍晋三元首相を中心とした右翼は韓国軽視と卑下で影響力を拡大してきた勢力だ。極右の佐藤正久自民党外交部会長が尹錫悦政権スタートに対して、「複雑骨折した日韓関係が保守政権が誕生したから簡単に改善するという夢想は捨てた方がいい」と現状況をかえって冷静に分析している。

 尹氏には韓日関係改善という巨大な論議に埋没して難関にぶつかるよりは、協力可能な具体的分野で着々と実績を積み上げていく方法を選ぶことを勧める。環境、エネルギー、少子高齢化など韓日共通の課題は多い。相対的に易しいものを先にして、難しいものは後回しにする“先易後難”の知恵を発揮することを望む。

(金青中(キムチョンジュン)東京特派員、3月14日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。

ポイント解説

「先易後難」でも日韓の違い

 尹錫悦氏の当選で、一気に日韓関係が好転するのではないかとの期待感が漂っている。だが、佐藤正久氏が言うように日韓関係は「複雑骨折」状態だ。病床にいる者がすぐに立って走れるわけではない。

 「先易後難」とは聞き慣れない言葉だが、中国が提起した中台関係のキーワードとして知られている。「先に簡単なことを進め、後に難しい問題を解決しよう」という意味だ。試験問題の解き方がこれだといえば、分かりやすいだろう。最初から難問に取り掛かっていては、時間ばかりかかって、解ける問題にすら手が回らず、結果、得点できない。まさに今の日韓関係である。

 「徴用工」「慰安婦」という超難問を入り口に立てて一歩も進めない状態で、そのため協力できる分野に取り掛かれず、全体として悪化した関係のままなのだ。

 しかし、記事では易しい問題として「環境、エネルギー、少子高齢化など」を挙げているが、実効あるものなのだろうか。輸出管理は手続きを正しく踏みさえすれば、当該品目の輸出は行われているし、処理水放出も国際原子力機関(IAEA)が認定する科学的根拠の備わったもので、むしろ基準値をさらに希釈した水を流すことになっている。これらのまともなことに反対しないことこそ「易しい」部類に属さないだろうか。

 こうした難癖をつけることをやめるだけでも、簡単なことが解決され、日韓双方の印象は確実に変わるはずだ。

 むしろ、難問を一番前に置いているのは韓国の方である。すなわち日韓併合が「合法か否か」の議論をいまさら蒸し返し、それに法的根拠を与えようとするのが徴用工裁判だからだ。日本の「無誠意」をなじるばかりでなく、遡(さかのぼ)って歴史を書き換え、遡及法で裁くことばかりに拘泥することをやめてみてはどうだろうか。残念ながら、この問題については「日本の協力」が及ばない分野であり、「易しく」もない。

(岩崎 哲)