【韓国紙】ウクライナ事態から学ぶべきもの


韓国紙セゲイルボ

同盟の重要性、浮き彫りに

8日、ウクライナ中部ビラツェルクワで、空爆によって破壊された街を歩く男性(AFP時事)

 ウクライナ事態はわれわれに大きな教訓を与えている。まず、国土と自由を守ろうとするウクライナの決死抗戦は感動的だ。ゼレンスキー大統領が地下壕で戦争を陣頭指揮し、女性・老人たちも銃を取って通りに立った。武器も持たず体だけでロシアの戦車を防いでいる国民たちの姿に全世界の軍事的・人道的支援が殺到している。天は自ら助くる者を助くだ。

 第2に、安保協定はいつでも紙切れになり得る。1991年のソ連解体当時、ウクライナは米露に次ぐ世界3位の核保有国だった。同国は94年、露米英と“ブダペスト覚書”を締結、非核化の代わりに安全保障と経済援助を約束された。だが2014年、ロシアのクリミア半島強制合併当時、西側諸国は連合軍を派兵しなかった。

 ウクライナが覚書を信じて軍事力の強化を疎かにしたのは致命的な失敗だ。われわれも終戦宣言と平和協定推進が韓半島の平和を保障しないという事実を悟らなければならない。

 第3に、同盟の重要性だ。ウクライナはクリミア半島を奪われた後も、自国を助ける同盟を確保できなかった。親西側派と親露派に分かれて安保問題で国論を統一できなかったためだ。ウクライナが機敏に北大西洋条約機構(NATO)に加入したなら、状況は大きく変わっていたはずだ。

 韓半島をめぐる安保情勢は厳しい。朝中露の権威主義政権と隣接した地政学的状況は際どいものだ。米国が“世界の警察”の役割を放棄する間に中国は台湾侵攻を狙っている。北朝鮮は弾道ミサイルを続けざまに発射して蠢動(しゅんどう)している、ウクライナ事態を見て北朝鮮が核保有にさらに執着するだろうという分析が支配的だ。米国の視線がウクライナに集中した間に、北朝鮮が軍事的挑発に出る可能性が大きいという見方も出ている。こうした状況に便乗して日本は核武装を窺(うかが)っている。

 事情がこうであるにもかかわらず、韓国政府の対応には失望させられる。全世界が対露制裁を強化しているのに文在寅(ムンジェイン)大統領は三・一記念日の演説でロシアの侵攻について一言も語らなかった。「強大国中心の国際秩序に振り回されてはならない」と言っただけだ。後になってロシア制裁に加わったが、バスが出てから手を振るようなものだ。

 ウクライナ事態は力がない平和の虚構性と同盟の重要性を悟らせる。次期政権は確固たる国防力と抑止力に基づいた平和を追求しなければならない。そうしようとするなら、韓米同盟を堅固にして、国防力強化に心血を注がなければならない。

 「平和を望むならば戦争を準備せよ」。古代ローマの軍事戦略家ウェゲティウスの名言を再確認する時だ。自由はただで与えられるものではない。

(蔡禧昌(チェヒチャン)首席論説委員、3月8日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。

ポイント解説

韓国の右往左往は「他山の石」

 「バスが出てから手を振るようなもの」。言いえて妙だ。韓国のバスはかつて、うかうかしていると止まらずに行ってしまった。だから、韓国人は遠くの信号で止まっている、自分が乗るべきバスが停留所のどの辺に止まりそうかを予測して駆け出す。何路線も集中してバス停の幅が広いためだ。何が起こったか分からず置いてきぼりを食らうのは、来韓間もない日本人だった。

 しかし、今回のウクライナ支援ではその日本人よりも文大統領は遅かった。「みなさん、やってますよ」と言われて動き出す日本人だが、文政権はそもそも呼び掛け自体が正しく耳に入らなかったようだ。

 記事は「力がない平和の虚構性と同盟の重要性を悟らせる」「自由はただではない」と結ぶ。バスをやり過ごした韓国を笑うことはできない。かつてのわが国がそうだった。いや、むしろ韓国は北朝鮮と対峙(たいじ)し軍事的緊張を抱えている分、日本よりもはるかに機敏に対応してきたはずだ。

 ところが、これまで「主敵」としてきた北朝鮮との対話・交流を切望し、経済支援に固執してきた文左派政権はその危機管理の本能すらなくしてしまったようだ。その結果、米国との同盟関係は揺らぎ、対日関係を最悪にし、中国にはモノを言えないという、改めてみれば「敵」に有利な状況をつくり上げていた。

 5月には発足する韓国の新政権はウクライナ事態からの教訓を学んで、米韓同盟を再構築し、対日関係を整理すべきだ。それには不断の対話を続けることで、それを新大統領に期待したい。

 一方で、日本こそウクライナ事態から学ばなければならない。幸いにしてタブーだった「核共有」議論が出て来るなど、環境や条件の変化に対応した同盟関係や近隣との付き合いを再考する機会が与えられている。他山の石とすべきだ。

(岩崎 哲)