トルコ感染者数 中東最大に
新型コロナ 対策講じるも勢い止まらず
トルコの新型コロナウイルス感染者数が9万人を超え、イランを抜き中東最大となった。外出禁止など対策を講じているものの、感染拡大の勢いは止まっていない。
(カイロ・鈴木眞吉)
ラマダンへ感染拡大懸念
イランは長い間、感染者数、死者数ともに中東で断然トップだったが、このところ、1日の感染者数は2000人台から1600~1300人台へと減少傾向を示している。それに対しトルコは、1日の感染者数が4000人~5000人台で推移、18日には総数でイランを抜き、20日には9万980人で中国(8万2747人)をも超え、世界第7位となった。
トルコ国内で感染者が初めて確認されたのは3月11日。その後海外からの帰国者を通じたとみられる感染が急拡大し、3月18日には初の死者が出た。中国と関係がある89歳の人物だった。
エルドアン政権は3月21日、重症化リスクの高い65歳以上や持病のある人の外出を禁止した。さらにスポーツジム、喫茶店、映画館、学校や大学も閉鎖した。政府は外出自粛を呼び掛け、レストランも店内での飲食を禁止した。3月21日時点で感染者947人、死者は21人。死者数は中東でイランに次ぐ第2位となった。
エルドアン大統領は4月3日、20歳以下の市民の外出を4日午前零時から禁止すると発表。同国最大の商業都市イスタンブールや首都アンカラなどの主要31都市への車両の出入りを15日間禁止するとともに、公共の場でのマスクの着用を義務付けた。4月3日現在の感染者は2万人を超え2万921人、死者数は425人に達した。
トルコ政府は5日、外出禁止令の対象となっていない市民に対し、1人当たり「週5枚のマスクを配布する」と発表した。
それでも感染拡大に歯止めがかからないことから、ソイル内相が10日午後10時前、翌11日午前零時から2日間、アンカラやイスタンブールなど主要13カ都市で、市民の外出を禁止すると予告なしに発表した。全市民を対象にした外出禁止令を出したのはこれが初めてだった。
ただ、開始のわずか2時間前に発令されたことから、市民が食料品店などに殺到、ツイッターには市民が店先や通りにあふれる様子が投稿された。この混乱で感染が拡大するのではと憂慮する声も寄せられ、同内相は「混乱を招いた」として辞意を表明。エルドアン大統領が12日、辞意を拒否し、事態は収拾した。
一方、トルコ議会は14日、感染拡大への対応策として受刑者数万人の釈放を認める法案を可決した。釈放対象者は、妊娠中の受刑者や、持病のある高齢者らで、殺人罪や性犯罪、薬物犯罪による受刑者は対象外。ギュル法相は13日、受刑者17人が感染し、うち3人が死亡したと発表していた。
感染者が急増した理由の一つには、1日4万件を目標に検査体制を強化したことがある。現地メディアによると、すでに60万件近くの検査が行われたという。
検査体制強化は、感染者と接触者の特定を急ぎ、早期治療を実現するためとされ、集中治療室や病床も十分用意しているとされる。
ただ、今後の最大の懸念は、4月24日ごろからイスラム世界で始まるラマダン(断食月)だ。近親者が集まり共に食事する機会などが増えるからだ。
日本がトルコから教訓を得るとすれば、対策が後手後手に回っていることだろう。全市民を対象に外出禁止令を出したのは、1000人以上の死者を出し、4万7000人もの感染者を出してからのことだった。部分的、局所的対策が、ウイルスの抜け道を用意し、感染拡大を急激化させたものとみられる。