米が南シナ海に艦艇派遣、中国の実効支配強化を牽制


 米インド太平洋軍は21日、中国が活動を活発化させる南シナ海に強襲揚陸艦「アメリカ」と巡洋艦「バンカーヒル」の2隻を展開したと発表した。米国が新型コロナウイルスへの対応に追われる中、南シナ海の実効支配を進める中国を牽制(けんせい)する狙いがある。

強襲揚陸艦「アメリカ」

米海軍の強襲揚陸艦「アメリカ」=2月22日、タイ中部チョンブリ県サタヒップ(タイ海軍提供)(AFP時事)

 インド太平洋軍は声明で「南シナ海での継続的なプレゼンスを通じて、われわれは同盟・友好国と協力して、航行と飛行の自由、インド太平洋の安全と繁栄を支える国際原則を推進する」と強調した。

 ロイター通信によると、南シナ海で先週、中国の調査船が沿岸警備隊の艦船を引き連れマレーシア沖に現れた。マレーシア国営石油会社ペトロナスが運営する探査船を追跡するなど、圧力をかけたとされる。米海軍の2隻の軍艦は、中国の調査船が航行している海域の近くに到着したという。

 また同通信は22日、これに、豪フリゲート艦「HMASパラマッタ」と米駆逐艦「バリー」が加わったと報じた。

 米海軍をめぐっては、太平洋に展開していた空母「セオドア・ルーズベルト」が新型コロナウイルスの集団感染が発生したことを受け、グアムに寄港するなど、米軍の即応能力低下が懸念されている。こうした中、中国は各国が領有権を主張する南シナ海で行政区を一方的に設置したほか、空母「遼寧」をはじめとした艦隊が訓練を実施するなど、実効支配を強めている。

 米国務省報道官はこうした動きに対して「新型コロナウイルスによる混乱を利用して南シナ海での法外な領有権の主張を拡大すべきでない」と批判していた。

(ワシントン 山崎洋介)