トランプ大統領の失敗ワースト10

アメリカ保守論壇 M・ティーセン

シリア撤収を主張
南部国境で難民親子を引き離し

マーク・ティーセン

 

 トランプ大統領は就任2年目の昨年、数多くの素晴らしい実績を上げたが、同時に、恥ずかしくなるようなことから、手の施しようのないことまで、さまざまな失敗もした。2年目のワースト10を挙げる。

 10位―「便所のような国」発言で交渉をぶち壊しにした。交渉が成功していれば、トランプ氏の国境の「壁」は出来ていた可能性がある。ほぼ1年前、トランプ氏は民主党に大胆な提案をした。約180万人の若い不法移民に滞在資格だけでなく、市民権獲得への道をも開くというものだった。あのひどい発言が、交渉に前向きだった民主党員の反発を招き、否定的だった民主党員に拒否する口実を与えた。

 9位―攻撃的なツイートが続き、大統領職の権威を損ねた。オマロサ・マニゴールト・ニューマン元大統領補佐官を「犬」と呼び、ストーミー・ダニエルズさんを「馬面」と呼んだ。その他にも不愉快なツイートは無数にある。大統領としてふさわしくないだけでなく、トランプ氏の政策を支持する可能性のある人々を追い払い、トランプ氏への嫌悪感を改めて思い出させた。

 8位―権力を乱用し、トランプ氏に反対する人々を英雄にしてしまった。ブレナン元中央情報局(CIA)長官の機密情報へのアクセス権限を取り消し、CNNのホワイトハウス担当記者ジム・アコスタ氏の取材許可証を無効にした。恥をかかされ、権力乱用の犠牲者となり、結果的にトランプ氏攻撃への有利な立場を獲得した。

◇下院で多数派喪失

 7位―都市部郊外の有権者らを遠ざけ、それによって共和党は下院の多数派を失った。トランプ氏は支持基盤の活性化を狙ったが、実際には有権者は離れていった。再選されたければ、郊外の共和党支持者の票を取り戻す必要がある。

 6位―ジョン・マケイン氏の葬儀に前代未聞のひどい対応を取った。マケイン氏が嫌いなのは分かるが、大統領である間は、嫌いな相手でも尊重しなければならないことがある。マケイン氏は米国の英雄だ。寛大な言葉を掛けられなかったことで、トランプ氏への評価は下がった。

 5位―ジャマル・カショギ氏殺害への対応によって、米国の道徳的な評価に傷を付けた。サウジアラビアとの恒久的な対立が受け入れられないというのは正しい。イランへの対抗勢力としてサウジは中東で重要な役割を担っているからだ。しかし、「まずは『米国第一』」「何千億ドルもの契約を手放すことはしない」と断言するのは適切ではない。

 4位―ヘルシンキでのロシアのプーチン大統領との記者会見は、恥ずべきものだった。プーチン氏との会談の直前、ロシアは、使用が禁止されている化学兵器を使って英国内で反体制活動家を殺害しようとし、米国は2016年中間選挙に干渉したとしてロシア人12人を起訴していた。これらを非難することなく、情報機関をめぐってプーチン氏を公式の場で擁護した。

◇政権内混乱の表れ

 3位―南部国境で移民の子供と家族を引き離す政策は、回避可能な悲劇だった。不法移民に対する不寛容政策は間違ってはいない。しかし、移民家族を想定し、対応を準備しておくことができなかった。大変な怠慢だ。政権内が混乱していることの表れであり、大統領職への信頼を損ねる。

 2位―アフガニスタンからの米軍撤収計画は、イスラム過激派組織タリバンとアルカイダへの贈り物だ。私は17年の「実績トップ10」で、オバマ大統領が行った破滅的な米軍撤収をひっくり返したとしてトランプ氏を称えた。「空白が生まれ、テロリストが入り込む」とトランプ氏は言った。しかし、昨年12月、約7000人の撤収の計画立案を軍に命じた。現在のアフガン駐留米軍のほぼ半数に当たる。ちょうど、米政府高官がタリバンと交渉している最中で、タリバンの第一の要求は米軍撤収だった。「ディール(取引)の妙技」からはほど遠い。

 1位―シリアからの全米軍撤収は、テロリストの喉元から兵力を引き揚げることになる。トランプ氏は「シリアのIS(イスラム国)を破った」と主張するが、これは、オバマ氏がISを「二軍」と呼び軽視したのと変わらない。ISは依然、イラクとシリアに3万人の戦闘員を持ち、4億ドルの資金を保有する。ISは敗北していない。トランプ氏の安全保障チームの誰一人として、撤収の判断を支持していない。オバマ氏が11年にイラクでしたように、ISの勢力拡大を許せば、米国は大変な代償を払うことになる。

 米軍撤収と家族引き離しを除いて、ここに挙げた項目のほとんどは、実質というよりも形式上の逸脱だ。これらの点を除けば、保守派の観点からトランプ氏は大統領として非常に優秀だ。

 しかし、昨年末のトランプ氏の支持率は、わずか39%。米国人の大部分は、ずけずけとものを言う政治を支持していない。