トランプ氏周辺で続く情報漏洩
アメリカ保守論壇 M・ティーセン
首脳会談詳細がメディアに
国家の安全脅かす犯罪
米紙ワシントン・ポストはトランプ大統領が「あらゆる手を尽くしてロシアのプーチン大統領との会話の詳細を隠した」と報じた。通訳者のメモを取り上げ、政権幹部と話したことも話さないよう指示するなどしたというこの報道を受けて、ワシントンで強い反発がわき起こった。トランプ氏がロシアの手先であることの証拠だという指摘すら出たほどだ。
ここではっきりしていることは、トランプ氏が、身の回りの人々を信用できず、外国の指導者との秘密の会話の詳細が漏れるのではないかと考えているということだ。なぜこのように考えるようになったのだろうか。過去の会話の詳細が、これまで何度もリークされるのを見てきたからだ。
2017年には政権内の何者かが、オーストラリアのターンブル首相との電話会談の全文をポスト紙にリークした。トランプ氏は会談で、ターンブル氏がオバマ氏との間で交わした難民交換合意を非難した。このやり取りが公表されたことで、ターンブル首相は恥をかき、重要な同盟国との関係が損なわれた。
政権当局者によって、ペニャニエト・メキシコ大統領との電話会談の全文がポスト紙にリークされたこともあった。国境の壁の建設費用をどちらが払うかをめぐる問題の解決について話し合った。ペニャニエト氏はトランプ氏に「どの国にも国境を守る権利があることを認めた」「この障害を乗り越えるためのいい方法を探そう」と言っていた。メキシコの大統領に恥をかかせた。
◇身元は巧妙に隠蔽
フィリピンのドゥテルテ大統領との電話会談の内容もリークされた。トランプ氏は、超法規的な殺人、人権侵害などと報じられていたにもかかわらず、「麻薬問題で」「素晴らしい仕事」をしているとドゥテルテ氏をたたえた。ワシントンは怒りに震えた。
メイ英首相との会談も2度リークされた。トランプ氏は、英メディアの報道に不満を訴えたが、それに対しメイ氏は決まり悪そうに、メディアを管理することはできず、「英国は北朝鮮ではない」と反論した。数カ月後の別の電話会談についてポスト紙は「トランプ氏が、英国はイランの封じ込めで十分な働きをしていないと考えているとメイ氏を非難、…ブレグジット(英欧州連合<EU>離脱)をめぐってメイ氏の真意をただし、欧州各国との貿易合意について不公正だと不満をぶつけた」と報じた。この会談でメイ氏と補佐官らは「動揺した」と報じられた。
ロシア当局者との間のやり取りも大量にリークされた。一例を挙げると、トランプ政権内の何者かが、トランプ氏は、プーチン氏に対して選挙の勝利に「祝意を表明してはいけない」と報告書で指示を受けていたにもかかわらず、プーチン氏に電話会談で祝意を伝えたことを暴露した。
またトランプ氏が、大統領執務室での会談で、過激派組織「イスラム国」(IS)のテロ計画の極秘情報をロシアのラブロフ外相に伝え、情報源がイスラエルであることを明らかにしたことを複数の高官がメディアに明らかにした。リークは、身元が分からないよう巧妙に行われた。
◇機密リークは違法
このような経緯があったにもかかわらず、政府高官らはトランプ氏とプーチン氏との会談から排除されたことに不満を持ち、メディアに匿名で、「過去2年間に5カ所でロシア大統領と面と向かって話し合ったが詳細な記録はない。極秘ファイルにもない」(ポスト紙)と不満をぶつけた。これは、トランプ氏の会談の極秘情報が常にメディアに漏れているということなのかもしれない。
ポスト紙は、トランプ氏が「プーチン氏との会話が公開され、監視される」ことを阻止しようとしていると指摘した。当然だ。大統領の外国指導者との極秘の会話が、公開されることはない。どの大統領も、見えないところ、国民の目に触れないところで外交を行うものだ。だからこそ、大統領の電話会談の内容、会談のメモは機密扱いとなる。秘密だからだ。メディアにリークすることは違法だ。
確かに、トランプ氏がこれらの非公開の会談で話したことの中にはとんでもないものもある。しかし、トランプ氏は大統領であり、すべての大統領は、外国の指導者との極秘の会談の詳細が、メディアの1面を飾ることのないように非公開とする権利がある。トランプ氏が、一連のリークに対して対策を講じ、プーチン氏との会談内容の入手を制限したことは、トランプ氏がロシアのスパイだからではない。確かなことは、トランプ氏の発言をメディアにリークすることで法を犯し、国家の安全を脅かしている人物がトランプ氏の身近にいるということだ。これは、ルール違反であるだけでなく、犯罪だ。
(1月16日)






