トランプ大統領の実績トップ10

アメリカ保守論壇 M・ティーセン

カバノー氏を判事指名
イラン核合意から離脱

マーク・ティーセン

 トランプ大統領は就任2年目、並外れた成果を上げ、大変な失敗もしてきた。それは今も続いている。この1年間のトランプ氏の実績トップ10について考えたい。

 10位―国外での拘束から19人を解放した。うち16人が米国人だった。トルコが釈放した米国人牧師アンドルー・ブランソン氏が、トランプ氏によって解放された19人目となった。その他には、北朝鮮に拘束されていた4人、エジプトに拘束されていた援助従事者と夫人、中国に拘束されていたバスケットボール選手3人とテキサス州の実業家1人、イスラム過激派組織タリバンに拘束されていた夫妻と3人の子供、ポルトガルに拘束されていた中央情報局(CIA)の元局員、ベネズエラに拘束されていた米国人2人。この2年間で解放された人の数は、オバマ大統領が8年間で解放した数より多い。しかも、オバマ氏と違いトランプ氏は、テロリストの指導者らを釈放したり、「ならず者国家」に大量の現金を空輸したりして、さらに人質が取られる要因をつくり出すこともなかった。

 9位―「忘れられた米国人」に手を差し伸べた。トランプ・ブームによって、オバマ経済で取り残された人々は恩恵を受けている。製造業の雇用は、過去23年で最も速いペースで成長し、高校卒業資格を持たない米国人の失業率は、過去最低を記録した。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、賃金は3・1%増加した。これは2009年以来最大で、同紙は「未熟練労働者が大きな恩恵を受けた」と報じた。

◇シリアのIS一掃

 8位―民主党、共和党が協力して重要法案を通過させた。注目されなかったが、トランプ氏は超党派ベースで多くの成果を挙げている。刑法改革、医療用麻薬オピオイド・性目的人身売買法、末期患者の治験薬の使用を認める「試す権利」法などだ。

 7位―CIAの女性の黄金時代に先鞭(せんべん)を付けた。ジーナ・ハスペル氏を初の女性長官に指名、エリザベス・キンバー氏を秘密活動の初の女性トップに据え、2001年同時多発テロ以降、米国の安全を守るため組織されたCIAの「バンド・オブ・シスターズ(きずなで結ばれた姉妹)」の活躍に報いた。

 6位―国内のエネルギー生産拡大への取り組みが実を結んだ。米国はこの年、サウジアラビア、ロシアを抜き産油量世界一となった。

 5位―シンガポールでの北朝鮮との首脳会談から半年、全く譲歩していない。独裁者、金正恩氏は、不要になった核施設の爆破で、多額の資金が得られるものと思っていた。トランプ氏は、その術数にははまらなかった。制裁や資産凍結を解除せず、朝鮮戦争の終結を宣言せず、外交関係を承認せず、そればかりか、金氏の側近に新たな制裁を科した。

 4位―シリアを再び攻撃し、過激派組織「イスラム国」(IS)のカリフ制国家を殲滅(せんめつ)させた。化学兵器を使用したシリアに、オバマ氏の「レッドライン(越えてはならない一線」)を越えたとして2度にわたって攻撃を加えた。昨年12月、米国の支援を受けた戦闘員らが、ISの最後の拠点ハジンを奪還した。敗北にはほど遠いものの、「地獄をISから解放」したことは正しい。

◇INF離脱を表明

 3位―ロシアに対して依然、強硬路線を取っている。トランプ氏は、中距離核戦力(INF)全廃条約からの離脱を表明した。ジャベリン対戦車砲をウクライナに供与し、ロシアがウクライナ海軍艦艇を拿捕(だほ)したことを受けて、20カ国・地域(G20)首脳会議でのプーチン露大統領との会談を拒否した。ロシアの外交官数十人を追放し、さらにロシアに制裁を科した。

 2位―破滅的なイラン核合意から離脱し、大規模な制裁を科した。この新たな制裁で、市場からイラン原油が消え、欧州投資家らとの主要取引がキャンセルとなった。イランの反政府デモが起きると、前任者とは違い、支持を表明した。

 1位―ブレット・カバノー氏を支持し、どんな状況になっても、ぶれることはなかった。2年で過去最多の85人の判事を承認した。2人の最高裁判事と、30人の控訴裁判事、53人の地裁判事らは、今後数十年間にわたって判事を務めることになる。カバノー判事の承認が共和党の上院での多数派拡大に貢献し、カバノー氏に反対した民主党の現職4人は敗北した。

 ここに入っていない実績も数多くある。メキシコ、カナダ、韓国と新たな貿易協定を結んだ。規制緩和を継続し、オバマ氏の「クリーン電力計画」「水質浄化命令」を廃止し、電力を州の手に戻した。米国の兵士、民間人を裁く権利を主張する国際刑事裁判所(ICC)に怒りをぶつけた。ジョージ・H・W・ブッシュ元大統領の葬儀を立派に執り行い、ホワイトハウスの威信は高まった。

(1月2日)