自衛官不足解消への課題
防衛省は、自衛隊の人員不足を解消するため、自衛官の定年を延長する方針を固めた。2020年度以降、階級に応じて定年年齢を1~5歳引き上げるとしている。
防衛省が公表している現在の自衛官の階級に応じた人数(充足率)は以下の通りだ。
任期制隊員(士長~2士)は3万9395人(69・5%)、曹長~3曹は13万7951人(98・5%)、准尉は4632人(93・8%)、将~3尉は4万2444人(93・2%)。また、定年の年齢は、将~将補は60歳だが、1佐が56歳、2佐~3佐が55歳、1尉~1曹が54歳、2曹~3曹が53歳となっている。
今回、定年延長となるのは将~3曹。現在、幕僚長を務める将の定年は62歳。
最近の自衛隊は、自然災害が起きるたびに、被災地に常に派遣されているため、災害派遣が主任務のように考えている国民もいるかもしれないが、自衛隊の主任務は国防であり、災害派遣ではない。
精強な軍隊(自衛隊)を維持するためには、若い人材が必要だ。私は自衛官の定年延長を否定するつもりはないし、50代という年齢であれば、体力的にも精神的にもまだまだ元気であり、自衛隊の中で活躍してほしい。
だが、今回の定年延長を、人員不足の解消を理由にするのであれば、充足率を見れば分かるように、任期制隊員の確保が喫緊の課題だ。
自衛隊は創設以来、志願制兵を採用してきた。日本国内では、徴兵制を導入する議論はタブーとなっているが、お隣の国・韓国は徴兵制であり、世界的には近年、徴兵制を復活した国もある。
自衛隊は、自衛官の定年を延長した程度では、慢性的な人員不足を解消することはできない。徴兵制では兵器のハイテク化に対応できないと主張する識者もいるが、自衛隊の職域(業務)は多岐にわたっており、人員不足を解消する手段として、徴兵制を検討することも一案だと、私は思う。
「徴兵制=戦争への道」という馬鹿(ばか)げた発想からの脱却が必要ではないだろうか……。
(濱口和久)