決意感じぬ4島返還大会

 今年の「北方領土の日」(2月7日)は「最悪の日」となった。東京都内で開催された北方領土返還要求全国大会での安倍晋三首相の挨拶からは、日本固有の領土である北方4島がロシア(旧ソ連)によって「不法占拠」されてきたという歴史の真実と、4島を必ず取り戻すという決意が感じられなかったからだ。

 日露間の北方領土の歴史的変遷については、本紙ビューポイント欄(平成30年12月23日付)でも詳しく触れたが、「北方領土の日」は1855年2月7日(安政元年12月21日)に日露通好条約(下田和親条約)が調印されたことにちなむ。この条約では択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島を日本の領土として国境線を定めた。北方4島はこのときから、他国に帰属したことは一度もない。北方4島は、旧ソ連が大東亜戦争(第2次世界大戦)末期の昭和20(1945)年8月9日、日ソ中立条約を破り対日参戦し、8月15日以降に不法占拠したことは紛れもない歴史の事実だ。

 安倍首相が歴史に名を残したいと考えて、功を焦るあまり、平和条約締結を何よりも優先し、経済協力を含め、一方的に譲歩するようなことがあれば、逆に「ロシアに領土を売り渡した首相」という汚名を残すことになりはしないか。前のめりは禁物だ。安倍首相に近い識者からも「最大のリスクは安倍首相」という声さえ聞こえてくる。

 安倍首相が強気な発言を控えても、ロシアが日本に歩み寄るようなことは絶対にない。いままでの日露交渉の歴史を見れば、誰の目にも明らかである。今回も1ミリも交渉が進展しないまま、経済支援だけが行われるようなことだけは絶対に避けるべきだ。

 ロシア人が日本人と同じような価値観を持っているのならば、北方領土問題はもっと早くに解決したはずである。

 相手が自分たちよりも弱いと思ったら、一切の妥協を許さずグイグイと押してくるのがロシア人であり、安倍首相はロシア人が日本人のようにお人好(よ)しではないということを肝に銘じて交渉するべきである。

(濱口和久)