撃墜も覚悟の緊急発進

 防衛省統合幕僚監部は10月12日、平成30年度「上半期4~9月」の航空自衛隊戦闘機による緊急発進(スクランブル)回数を発表した。

 回数は561回(平均1日に3回)で、前年同期と同数となり、上半期ベースでは過去最多となった平成28年度に次いで2番目に多い。国別では、対中国機が345回、前年同期(287回)に比べて約2割増となる全体の61%を占めた。対ロシア機は全体の38%となる211回で、前年同期(267回)の約2割減だった。

 統幕は「中国機では戦闘機、ロシア機では情報収集機に対して、それぞれ多く緊急発進を行った。日本海で初めてロシアのスホイSu35戦闘機が確認されるなど、日本周辺での活動は依然として続いている」と説明した。最近は、テレビのニュースで緊急発進回数が報道されることはあまりない。新聞も大きくは取り上げないため、日本人は日本周辺の厳しい現実を理解していないのではないか…。

 一方で、安倍外交の成果により、対中、対露との友好関係は前進している。だが、大幅に回数が減ることはないだろう。冷戦時代と比較しても、ほとんど回数に変化はない。違うのは、ここ数年、ロシア機よりも中国機に対する回数が多いということだ。

 自衛隊法第84条に基づき、空自は国籍不明機による領空侵犯に備えて、全国に7個の戦闘航空団を展開。常時4機を待機させ、2機1組となり、5分以内に発進ができる24時間の警戒態勢を敷いている。

 現行の自衛隊法では、領空侵犯機に対して「強制着陸」か「強制退去」しか認められていないため、警告に応じない領空侵犯機を撃墜することはできない。空自機が武器を使用し、領空侵犯機を撃墜できるケースは、「正当防衛」と「緊急避難」に限定されている。そのため発進した2機のうちのどちらかが撃墜されることも覚悟しながらの任務に隊員たちは日々就いている。この現実を多くの日本人は知っておくべきだ。

(濱口和久)