新年こそ憲法改正議論を
戦争、テロ、大規模自然災害、特殊災害、感染症、その他あらゆる危機に対応できる実力組織は自衛隊しかいない。警察、消防、海上保安庁もある程度のレベルまでは対応できるかもしれないが、最後の砦(とりで)が自衛隊であることは多くの日本人が認めている。自衛隊という言葉が新聞に登場しない日はない。
一方で、自衛隊の存在は日本国憲法には何も規定されていない。逆に、自衛隊の存在を否定するかのように、憲法第9条2項には「陸海空その他の戦力は、これを保持しない」と書かれている。
これに対して、日本政府は主権国家として自衛権を有しており、2項の下でも、自衛隊は自衛のための必要最小限の実力だと解釈している。だが、自衛隊は違憲だと解釈する憲法学者が多数いる。自衛隊が合憲であると解釈する憲法学者は少数派だ。
自衛隊は昭和25年6月25日に起きた朝鮮戦争を契機に、警察予備隊として創設され68年間が過ぎた。昭和、平成と二つの時代を生きた自衛隊は、人間であれば、ほぼ古希に近い年齢となった。自衛隊の出動する機会が増える中、このまま自衛隊の存在を曖昧な状態に放置しておくことは政治の責任として許されない。
現在、野党は憲法改正の議論のテーブルに着くことを拒否している。立憲民主党の枝野幸男代表に至っては、「安倍政権下での憲法改正の議論には参加しない」とまで言っている。憲法改正の議論に参加しようとしない野党に対し、「職場放棄」だと発言して批判された自民党議員がいたが、枝野代表の発言はまさに職場放棄に等しいと思うが。
安倍晋三首相の憲法改正案は、2項を残し、新たに3項を設け、自衛隊を明記する改正を目指している。自衛隊が憲法に明記されれば、自衛隊を違憲だと主張する日本人はいなくなるはずだ。
日ごろから人権を強調する野党議員こそ、自衛隊を憲法に明記することに積極的な声を上げ、自衛隊をめぐる論争に終止符を打つべきである。新年こそは、憲法改正の議論が加速することを期待したい。
(濱口和久)





