「民間防衛」議論の時

 東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)から3月11日で8年となる。東日本大震災後も次々と日本列島を災害が襲い続けている。災害のたびに自衛隊は出動し、人命救助や捜索活動などを担ってきた。

 平成7年1月17日に起きた兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)までは、自衛隊が参加する防災訓練や避難訓練を実施している自治体は非常に少なかった。神戸市に至っては「国際平和都市」を宣言し、神戸市役所の職員に加えて、神戸港の船員組合も「反自衛隊色」を鮮明にしていた。

 だが、阪神・淡路大震災を境に、国民の自衛隊に対する認識は大きく変化し、災害の現場に自衛隊が出動することは当たり前となっている。東日本大震災は最大規模の出動となった。今や、自衛隊は出動のたびに被災地の人たちから感謝され、頼もしい存在として期待されている。

 一方で、日本全体が人手不足の状態となっているが、自衛隊もご多分に漏れず新隊員の確保に苦労している。新隊員の受験年齢の引き上げや定年延長などの施策だけでは抜本的な人材確保の解決とはならないだろう。

 自衛隊は被災地への出動だけが任務ではない。一番の任務は国防であり、被災地への出動により国防の任務が疎(おろそ)かになることは絶対に許されない。東日本大震災では、自衛隊が東北地方に部隊を展開し活動している最中、ロシアや中国は自衛隊の能力を試すがごとく、日本の領域近くで戦闘機やヘリコプターを飛ばすという行為に及んだ。3月11日の地震発生から3月31日までの間に、航空自衛隊はロシア機に対して14回、中国機に対しては4回のスクランブル発進をしている。

 今後、自衛隊は国防の任務と災害派遣のオペレーションを同時に行うだけの人員や体制維持するのは厳しくなるだろう。首都直下地震や南海トラフ巨大地震などが起きたら、「国難」クラスの甚大な被害が想定される。自衛隊だけでは対応できない災害規模だ。

 日本も「民間防衛」について真剣に議論する時が来ていると、私は思う。

(濱口和久)