北の核への警戒怠るな
今から半年前の6月12日、シンガポールで開催された米朝首脳会談で、北朝鮮の金正恩労働党委員長は「完全な非核化」をアメリカのトランプ大統領に約束した。この会談を受けて、北朝鮮は約束を着実に履行するかと思いきや、さまざまな理由を付け、非核化の作業を先延ばしにしてきた。
現在、核を保有している国はアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮の9カ国だ。北朝鮮は「完全な非核化」をする気があるのか。アメリカが望む非核化は「完全かつ検証可能で不可逆的な廃棄(CVID)」だが、北朝鮮が約束を履行するとは到底思えない。なぜなら、核の保有が最大の外交カードとなることを北朝鮮は熟知しているからだ。
NPT(核不拡散防止条約)では、「アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国以外の核兵器の所有は禁止する」としているが、インド、パキスタン、イスラエルは核を保有し続けている。一度、核を手にした国家は、絶対に核放棄しないというのが、世界の常識であり、IAEA(国際原子力機関)による査察が今後行われても、北朝鮮が核をどこかに隠せば、完全な非核化は実現しない。
北朝鮮では会談後、「対米融和、制裁解除、経済(生活)の向上」に進むと期待感が膨らんでいたが、現在はどうか…。
トランプ大統領も、現在は北朝鮮の核問題への関心は薄れている。
そもそもNPTは、第2次世界大戦時に枢軸国だった日独伊の3カ国に核兵器を持たせないために作られた条約だ。IAEAも、イタリアに関しては、それほどの力がないと判断しているが、日本とドイツに対しては、今も厳しい査察を行っている。いずれも日独伊を監視するために作られた条約と機関であることを知っている日本人は少ない。
最近は、日本では北朝鮮の核・ミサイル問題は、あまり報道されなくなった。住民の避難訓練も中止されている。だが、北朝鮮の核・ミサイルの脅威が減少したわけではない。日本は北朝鮮への警戒を怠るな。
(濱口和久)





