人口減少社会、次の一手必要な「地方創生」
厚生労働省が昨年末に公表した人口動態統計の年間推計によると、2018年に国内で生まれた赤ちゃんは、1899年の統計開始から最少だった2017年より2万5000人少ない92万1000人で、3年連続で100万人を割り込む見通しだ。人口減少が進む傾向が一層顕著になった。
避けられない国力衰退
戦後、わが国の総人口は増加を続け、1967年には初めて1億人を超えたが、2008年の1億2800万人をピークに減少に転じた。国立社会保障・人口問題研究所によると、日本の人口減少のスピードは今後さらに加速し、毎年数十万人単位で減り続ける。41年以降は毎年100万人以上のペースで減少し、60年に8700万人弱、2110年には4300万人を下回ると推計されている。
世界には過大な人口を持ちながら貧しい国が少なくない。だが日本のような高度に安定した産業国家では、人口イコール経済力であり、人口減少で国力の衰退は避けられない。安全保障能力のバロメーターでもある。国家の命運を懸け、国策として「人口政策」を推進すべきだ。
安倍晋三首相は2014年、地方産業の再興によって安定雇用を創出し、地方移住をあっせんする「地方創生」政策を発表した。東京一極集中を是正し、地方の人口減少に歯止めを掛けようとする人口政策の一つだ。
その影響もあって各地の地域住民らが人口減少対策を行っている例は少なくない。以前なかった一部の農村、離島などへの人口流入現象も見られる。しかし地方への新しい人の流れができ、定着しているとは言い難い。日本全体の活力を上げるための次の一手が必要だ。
かつて、政府の人口政策に「エンゼルプラン」があった。これは1989年に戦後最低の出生率1・57を記録したのを機に少子化対策として検討され、94年に続き99年には新プランが策定された。
だが、厚労省を中心に限られた省庁で進められ、当初は出生率の引き上げを目指した少子化対策は、今や子育て支援を目的とした保育所問題、特に待機児童問題の解決が焦点となっている。改めて人口政策としての少子化対策を打ち出さなければならない。
一方、昨年末、外国人労働者の受け入れを拡大する改正出入国管理法が成立した。人手不足倒産が増えており、現場の労働力不足を補うための措置であるが、間接的に日本の人口減少をカバーする施策でもある。
しかし、移民によって人口問題を解決するという方向への移行は避けるべきだ。全国では約70万人の引きこもり・準引きこもりや71万人のニート(若年無業者)がいる。彼らの社会復帰を促すことが大切だ。
家庭築く楽しさ実感を
90年代は「男女共同参画」の運動に勢いがあり、女性の社会進出と子育ての両立を嫌って「子供を産まない選択」を今日的だとうそぶく評論家さえいた。
だがこのような間違ったイデオロギーを払拭(ふっしょく)し、若い男女は今こそ家庭を築く楽しさ、子供を産む素晴らしさを実感してほしい。