日印首脳会談、中国を念頭に連携強めよ


 安倍晋三首相は、来日したインドのモディ首相と会談し、安倍首相が掲げる「自由で開かれたインド太平洋戦略」を推進するため、安全保障や経済の分野における連携強化を確認した。

2プラス2の新設で一致

 モディ氏は2014年の首相就任以来、安倍首相と毎年、互いの国を訪問し合うシャトル外交を続けている。南アジアへの浸透を図る中国を念頭に、日本との関係を強化する狙いだ。

 安倍首相は自身の別荘のある山梨県にモディ氏を招いて手厚くもてなした。これは昨年、モディ氏の地元グジャラート州に招かれたことに対する返礼の意味合いがある。インドとの絆の深さを示した形だ。

 会談では、外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)の新設など安全保障分野の協力強化で一致。自衛隊とインド軍が食料や燃料を融通し合う物品役務相互提供協定(ACSA)の協議入りでも合意した。

 外交と安全保障は密接に結び付くようになっている。日本は米国のほか、オーストラリア、英国、フランスなどと2プラス2を開いている。安倍首相は日印2プラス2について「日印新時代を象徴する安全保障協力」と考えた。

 会談後、日印両政府は両国の戦略的関係を発展させる方針を盛り込んだ共同声明を発表。価値観を共有する米国などとの協力を拡大し、航行の自由や法に則(のっと)った通商を確保することを明記した。

 日印両国は、米国、豪州と共に、中国の海洋進出を牽制(けんせい)する「自由で開かれたインド太平洋」戦略を共有するパートナーである。中国は南シナ海の軍事拠点化を進めるなど覇権主義的な動きを強めており、米豪印との連携の重要性は増している。

 インドは中国がインド周辺に海洋拠点を築く「真珠の首飾り」戦略に対する警戒感を隠さない。インドは4000㌔超に及ぶ未画定の国境線をめぐり、中国と対立している。中印関係は昨年夏、双方の軍が国境地帯で2カ月以上にらみ合いを続けるまでに悪化した。

 中国のシルクロード経済圏構想「一帯一路」に対しても、中国がパキスタンで建設を進めている中パ経済回廊が印パの係争地であるカシミール地方を通ることから「主権侵害」として反対の立場を崩していない。一帯一路をめぐっては、相手国に巨額の債務を負わせ、中国の影響力を拡大するものだとの批判が広がっている。

 日印両国は一帯一路に対抗するため、スリランカやミャンマー、バングラデシュなど第三国向けのインフラ支援で協力する方針を確認した。両国がこうした国々の経済成長に寄与することが、中国の影響力をそぐことにもつながろう。

地域の安定に貢献を

 インドは、豪州などと共に日本の「準同盟国」となりつつあると言える。安倍首相は首脳会談の際の共同記者発表で「自由で開かれたインド太平洋というビジョンの実現に向けて日印の特別戦略的グローバル・パートナーシップを力強く推進する」と強調した。地域の安定と発展のために、両国は大きく貢献すべきだ。