各党代表質問、国会で改憲への建設的論議を
衆院本会議で安倍晋三首相の所信表明演説に対する各党代表質問が始まり、立憲民主党の枝野幸男代表、自民党の稲田朋美筆頭副幹事長、国民民主党の玉木雄一郎代表が質問に立った。首相は所信表明で憲法改正に意欲を示しており、与野党の改憲論議が本格化することを期待したい。
枝野氏「憲法は権力縛る」
稲田氏は自民党の改憲政党としての立場に触れながら、憲法に自衛隊を明記する首相提案に関して「憲法9条については2項を維持することによって、集団的自衛権はフルサイズでは認めないが、自衛隊を明記することによって自衛隊違憲論に終止符を打つ、ということだと理解している」と確認。その上で「憲法改正は急務だと思うが」と質問した。
一方、枝野氏は「憲法の本質は、国民の生活を守るために、国家権力を縛ることにある」との認識を示し、「憲法を改正することがあるとすれば、国民がその必要性を感じ、提案する草の根からの民主主義のプロセスを踏まえて進められるべきだ」と注文して立憲主義をアピールした。与野党の論客が、今国会論戦の先陣を切った形だ。
ただ、稲田氏が質問で「現行憲法は占領下に制定された。法治国家の基本法たる憲法が、主権が制限されていた時代に作られたことは厳然たる事実」と指摘した通り、“縛った”のは国民ではなく米軍を中心とする占領軍だ。
自衛権は主権国家の権利であり、自衛隊は国民を守るために存在する。憲法は防衛政策をがんじがらめに縛っており、9条によって憲法学者の間で自衛隊違憲論が支配的となっている。自衛隊は既に国民の間で定着しているが、憲法との乖離(かいり)を放置することは好ましくない。
首相は「自衛隊員が誇りを持って任務を全うできる環境を整えることは今を生きる政治家の責任だ。国民のため命を賭して任務を遂行する隊員の正当性の明文化、明確化は国防の根幹に関わる」と訴えた。
全ての国会議員は与野党の違いを超え、改憲において建設的な役割を果たしてほしい。憲法審査会で改憲論議を進める必要がある。
また、外国人労働者受け入れ拡大のための出入国管理法改正について枝野氏は、首相が否定してきた「移民受け入れ政策への転換」として追及した。首相は改めて否定したが、枝野氏の指摘通り環境整備の遅れは否めない。慎重を要する。
枝野氏が自身も一員だった旧民主党政権の決定を棚に上げて低所得者に打撃を与えるとして消費税率10%への引き上げに反対し、また沖縄県の米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対する姿勢は疑問だ。
立憲は難題に向き合え
民主党政権は普天間飛行場の移設先の見直しを進めたものの改めて辺野古と結論付け、社会保障とセットの消費税増税の関連法を主導して成立させた。その政治責任は重い。
民主党の流れをくむ立憲民主党は安全保障、社会保障の難題に政権担当経験を踏まえて向き合い、野党第1党としての矜持(きょうじ)を示すべきだ。