新在留資格、議論深め精密な制度設計を


 外国人労働者の受け入れを拡大する新たな在留資格の創設をめぐる議論が始まった。

 このまま労働力不足が進めば国力の衰退は免れない。その一方で、将来の国のかたちにも関わる問題だけに拙速な議論は慎まねばならない。

単純労働にも枠を広げる

 安倍晋三首相は、新在留資格創設のための出入国管理法改正案を今国会で成立させ、来年4月から施行したい考えだ。しかし自民党の法務部会では、異論が続出し意見集約もならなかった。「重大な法案なのに議論を急いでいることに驚く」という意見も出た。課題の多さを考えれば当然とも言える。

 ただ、外国人労働者受け入れに関する新制度の創設が必要とされているのは論をまたない。それが「緊急の課題」(菅義偉官房長官)であることも確かで、いたずらに結論を先送りすべきではない。今国会でなくとも、期限を定めて新制度を創設する必要がある。

 新在留資格は、これまで認めてこなかった単純労働にも枠を広げるもので「歴史的転換」とも言われている。「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類だが、1号は在留期間が5年に限られ、家族も基本的に呼び寄せられない。

 一方、各種試験で「熟練した技能」を証明して2号を取得すれば、在留期間は無期限となって家族の帯同も認められる。識者からは「事実上の移民政策」との指摘が出ている。安倍首相は移民政策を否定しているが、明快で分かりやすい方針、制度にすべきである。

 懸念されるのは、新制度で外国人労働者が際限なく増えはしないかという問題である。受け入れ人数の限度も設定する必要があるのではないか。治安悪化に対する不安も小さくない。特に、在留期限が過ぎても不法滞在するケースが増えないか心配だ。それが犯罪の温床になる恐れもある。政府は、不法滞在者の強制送還を拒む国を受け入れ対象国から除外する方針だが、新設される予定の「出入国在留管理庁」の役割は大きい。

 日本は、民族や言語、文化の均質性の高い国だ。外国人に相当開かれてはきているが、共生するとなると話は別である。国民の側に心の準備ができているのか考える必要がある。

 ただ、各国で労働力が不足し、外国人の労働者が国を選ぶ時代になりつつあるという現実も直視しなければならない。現行の技能実習制度では、実習生を安価な労働力と見なし、様々な問題も起きている。受け入れるのであれば、人権上も不備のない制度にすることが求められる。

 福祉制度をどこまで適用するかも問題だ。不正な受給を防ぐことも考えなければならない。これまでを大きく上回る外国人労働者を受け入れる以上、将来の国と社会のビジョンを描いた上で、精密な制度設計をする必要がある。

業種選択は戦略的観点で

 受け入れる業種について、政府は当初、建設、外食、農業、宿泊、介護、造船など10分野を検討していたが、漁業や素材産業などを含む14分野が希望している。その選択については戦略的な観点で進めるべきである。