不透明な沖縄知事第三者委
運営は県民税で非公開
いずれ裁判になる「辺野古」
米軍普天間基地の辺野古(へのこ)移設をめぐる沖縄県と日本政府の対応が、新たな段階に入った。
就任3カ月を迎えた翁長(おなが)雄志(たけし)沖縄県知事は3月23日、名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沿岸部埋め立て作業に対して、埋め立て事業者である防衛省沖縄防衛局に「岩礁を破砕する海底調査等の作業停止」を文書で指示した。
海底作業は「漁業調整規則違反の懸念」というのが県側の主張である。つまり、サンゴを壊しているとの指摘である。
これに対し翌24日、沖縄防衛局は「指示は違法で無効」として漁業海域を所管する農林水産大臣に執行停止を申し立てした。
「指示は、岩礁破砕の解釈を誤り、事実誤認」としている。サンゴを毀損していないという反論だ。
辺野古埋め立て問題はいずれにしても「法廷に持ち込まれる可能性が高い」と関係者は口をそろえる。県庁関係者は「事案ごとに争点が出てくるはずだから、いくつもの裁判が想定される」と渋い表情だが、翁長知事の「私的」諮問機関として、辺野古埋め立てを承認した行政手続きの法的瑕疵(かし)等を検証する「第三者委員会」がスタートした当初から「裁判闘争は避けられない」と踏んでいた経緯がある。
「第三者委員会」(法律専門3名、環境専門3名の合計6名)とはそもそもどんな性格を持ち、役割、目的はなにか。十分な説明はきかない。どちらにしろ、この委員会の動向が今後の裁判の有無に大きな影響を及ぼすのはまちがいないだろう。そこで県議会や関係者などの話をまじえていくつかの疑問点を探ってみる。
「県の審議会はあるが、知事の『私的』な諮問機関設置は過去に例を知らない。県に属する組織としては初めてではないか」
幹部だった県職員OBのことばだ。実は沖縄県議会議員を5期務めた筆者も初めてきく。
「辺野古新基地反対を最大の柱にする翁長県政にとって、それこそ切り札的存在」(県庁関係者)として鳴り物入りで今年1月に発足、2月に第1回会合をもった。
大城浩弁護士を会長とする第三者委員会は、3月25日に第4回目の会合を県庁内で開き、大城会長はマスコミに対して「論点整理をほぼ終え、具体的な議論に入った」と述べている。辺野古埋め立て承認の瑕疵に関しては「調べることを調べた上で結論が出る形を取りたい」と直接の言及を避けた(沖縄タイムス、3月26日)。
ここでひとつ、疑問がある。知事の「私的」な諮問機関の形態をとりながら、県民の税金で運営費(予算額180万円、県広報課所管)をまかなっている委員会が、会合の状況や議論の内容まですべてを「非公開」としている現状だ。
会合後の会見は、質問の核心に答えない形式的な「一方通行」。具体的に一体なにが論点なのか、議論の方向性や各委員の発言内容、議論の収束・結論を出す時期など県民には一切が見えない。「6、7月ごろに結論」(事情通)のようだが、それこそ「密室委員会」の典型といえる。
沖縄のマスコミも批判精神が足りない。仲井真前県政の場合、県側と政府、あるいは政党関係者との会合は「公開」を迫り、密室政治、密室行政と書き立て、批判したではないか。翁長県政の重要委員会は「密室」でいいのか。なぜもっと切り込まないのだろう。「新基地反対」なる闘争を応援した手前、言論活動を自粛ないしは放棄しているとしか思えない。
折しも開会中の県議会2月定例会ではさすがに野党・自民党が問題点を痛烈に質した。島袋大氏(自民、豊見城市選挙区)は第三者委員会委員の桜井国俊沖縄大学名誉教授が2月の第1回会合の前日、キヤンプ・シュワブゲート前の抗議集会で「辺野古の埋め立て工事をストップさせるのが我々の使命だ」と連帯あいさつしたことに触れ、「辺野古工事をストップさせるのが第三者委員会の前提になっている」と桜井委員の更迭を求め、第三者委員会の客観性、公平公正性、中立性に大きな疑問を呈した(3月2日、一般質問)。
環境専門の桜井委員は、公害反対運動で知られる故宇井純氏のグループ。「あらゆる手法を駆使して工事を止める」と公言する翁長知事の言動と符合しており、島袋氏は任命責任者の翁長知事を厳しく追及している。
第三者委員会に関しては「第二共産党」といわれる「うまんちゅの会」の具志堅徹氏も 「中立性はありえない。(中立性は)あいまいで生ぬるい。はっきり辺野古に基地はつくらせない(委員会)とすべきだ」と翁長知事に逆注文をつけた(3月5日、県議会一般質問)。
現時点でみたところ、第三者委員会の役割、目的は前県政のアラ探しと辺野古埋め立ての瑕疵を立証することにあると考えられる。
これまで時間をかけて積み上げた行政の継続性や中立、正当性を根本的に否定することになる。沖縄県民の苦悩はますます募るばかりだろう。