辺野古移設、粘り強く理解求める努力を
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画をめぐり、菅義偉官房長官と同県の翁長雄志知事が那覇市内で会談した。協議は平行線に終わったが、政府は粘り強く沖縄の理解を求める努力を継続する必要がある。
官房長官と知事が会談
両者の正式な会談は、翁長氏が辺野古移設反対を掲げて昨年11月の知事選に勝利した後、初めて行われた。
菅氏は「日米同盟の抑止力維持と(普天間の)危険除去を考えた時、辺野古移設は唯一の解決策だ」と述べた。しかし、翁長氏は「新基地は絶対建設できない。不可能だろう」と重ねて反対を表明した。
政府と沖縄の対立は根深いが、双方とも対話の継続では一致し、打開策を模索したい考えだ。翁長氏は安倍晋三首相との会談も求めた。
日米両政府は96年、代替施設建設を条件に普天間飛行場の全面返還で合意した。2006年には、建設先を辺野古沿岸部とする移設計画を決定している。13年12月に当時の仲井真弘多知事が沿岸部埋め立てを承認し、昨年8月にボーリング調査に着手した。
これに対し、翁長氏は今年3月に作業停止を沖縄防衛局に指示。林芳正農林水産相が防衛局の申し立てを認めて知事指示の効力を止める決定を行って対抗するなど、政府と沖縄の亀裂が深まっている。
市街地の中心に位置する普天間飛行場の固定化は絶対に避けなければならない。危険性除去と抑止力維持の両立のため、辺野古移設はやむを得ない選択だと言える。
翁長氏が辺野古移設に反対するのは、昨年の名護市長選、県知事選、衆院選で反対派が勝利したことを踏まえたものだ。しかし移設が頓挫した場合、普天間飛行場の危険性をどのように除去するのか。
また、県内で反対派が多数であることは確かだとしても、辺野古移設を支持する県民の存在を忘れるべきではない。その背景には、沖縄本島の南部と北部で経済格差が拡大していることがある。
北部は山林地が多く、産業が乏しい。北部にある辺野古の住民の中には、移設による地域活性化に期待する人も少なくない。翁長氏が辺野古移設に反対するのであれば、南北間の格差を是正するための具体策を示す必要がある。
何よりも中国が不当に領有権を主張する尖閣諸島は沖縄に属している。日本そして沖縄を守るために、抑止力を高めることが不可欠だ。政府はこうした点について丁寧に説明し、辺野古移設への沖縄の理解を得ていくことが求められる。
移設円滑化の取り組みを
安倍首相は今月末に訪米し、オバマ米大統領と会談する。これに先立って、日米の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)で防衛協力の指針(ガイドライン)を再改定する見通しだ。
日米安保体制を強化し、中国や北朝鮮を牽制(けんせい)するためにも、安倍首相は辺野古移設の円滑化に向けた取り組みを進める必要がある。
(4月7日付社説)