機能性表示食品、消費者は冷静な判断が必要
食品の健康への効能を、事業者の責任で表示できる新たな食品表示制度が始まった。
健康関連食品の市場拡大が期待される一方、十分な科学的根拠のない商品が出回ることも懸念されている。消費者は新たな表示を冷静に判断することが求められる。
届け出から最短60日で
「特定保健用食品(トクホ)」「栄養機能食品」に続く第3の保健機能食品「機能性表示食品」は、早ければ6月にも店舗に並ぶ。対象はサプリメントや加工食品のほか生鮮食品など、アルコール類以外の食品全般だ。
現行のトクホは国の事前審査があり、事業者は臨床試験で安全性や有効性を確認することが必要だ。栄養機能食品は、17種類のビタミン類やミネラル類を成分に含む食品だけが対象で「ビタミンB12は赤血球の形成を助ける栄養素です」など、表示できる文言も限られる。
これに対し、新制度では学術論文などの科学的根拠を国に届け出れば「目の健康維持に役立つ」「肌を整える」など体の特定部位を挙げて効能を表示できる。ただ、あくまでも健康の増進や維持の範囲で、「糖尿病の人に」など病気の治療をうたう表現は認めない。
審査に数年かかることもあったトクホと異なり、届け出から最短60日で表示可能で、中小企業でも利用しやすい。栄養機能食品に課された含有成分に関する制約もない。
新たな表示制度は2013年、規制改革の一環として導入が決まった。市場拡大への期待も高い。
だが、消費者団体からは「根拠の不確かな商品が出回る恐れがある」との懸念も出ている。トクホのような審査がないため、消費者に不安が残るのは無理もない。
実際、消費者庁が新制度開始を前にした先月末、インターネットで緊急調査を行ったところ、25業者が「機能○○食品」など紛らわしい表現を使って商品を販売していた。機能性表示食品に関しても、消費者に誤解を与えるような表示があってはならない。
消費者庁は、事業者が届け出た学術論文などをホームページで公開するほか、商品の抜き打ち検査で信頼性を担保したい考えだ。健康食品メーカーなども加盟する日本通信販売協会も、事業者が機能性表示食品に関して消費者庁に届け出た内容をチェックする体制を整備するとしている。
事業者は健康被害が生じた場合に備え、情報収集体制を構築する必要がある。消費者庁は問題がある場合、取り消し処分を行う。国や事業者の責任は重い。安全性確保に万全を期さねばならない。
規則正しい生活習慣を
消費者にも健康食品について正しい知識を持つことが求められよう。特定の食品を摂取するだけで健康を維持できたり、病気が治ったりすることはあり得ない。
健康に必要なのは、適度な運動や睡眠、バランスの取れた食事など規則正しい生活習慣であることを改めて確認したい。こうした習慣を身に付けてこそ、健康食品も生きるはずだ。
(4月8日付社説)