科書検定、教師は教育正常化に努めよ


 来年4月から中学校で使われる教科書の検定結果が発表された。文部科学省は今回から新しい検定基準を用い、領土問題について日本政府の考え方が書かれるようになった。慰安婦や戦後補償など政府見解がある事柄については明確に、また見解が分かれる事柄はバランスよく伝えるように求めた。

 いずれも当然の措置である。これでやっと「日本の教科書」らしくなったことを歓迎する。

 政府見解踏まえた記述

 これまでは竹島(島根県)や尖閣諸島(沖縄県)について「日本固有の領土」と明確に書いていない教科書があった。今回は、竹島を「韓国が不法に占拠している」といった記述が大幅に増えた。尖閣諸島は日本が有効に支配しており、日中間に解決すべき領土問題は存在しないのは周知の事実だ。

 全教科書が北方領土に加えて竹島、尖閣諸島を取り上げて日本領土であることを明記した。下村博文文科相は「領土を正しく教えるのは当然で、関係諸国も理解してほしい」と述べた。教師は新しい記述に基づき、竹島問題を日韓関係の歴史、尖閣問題は日中関係の経緯と絡めて生徒に説明してほしい。

 慰安婦問題については、1社の教科書が1993年の河野洋平官房長官談話の要約を掲載した。同談話は「軍の関与の下、女性の尊厳を傷つけた」として、お詫びと反省の気持ちを表明したものだが、疑問点が多い。

 だからこそ検定は2007年に閣議決定された政府見解も考慮するよう求めた。その結果、「軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような資料は発見されていない」との政府見解が加えられた。これによって、ようやくバランスが取れた格好となった。

 また、戦後処理や「植民地支配と侵略」を謝罪した1995年の村山富市首相談話に触れた教科書の記述に「政府は国家間の賠償などの問題はすでに解決済みという立場をとってきています」の一文が追加されるなどした。

 教科書の目的は、教育基本法の目標にかなうよう排他主義に陥らない正しい愛国心を涵養することである。

 だが、これまでの教科書には日本を悪者扱いばかりする左翼史観に基づくものが多かった。これでは愛国心も育てられないし、偏った歴史観を生徒に刷り込むだけとなろう。その点、新しい検定基準は適切なものとして評価できる。

 これからの教師に求められるのは、今までの偏向教育を是正することである。前回4年前の中学教科書検定では、一部の教科書に対して「戦争賛美」などと決め付ける反対運動が起こった。批判の立ち位置はどのような思想、世界観を持つかによって異なる。

 「戦争賛美」の批判は正しい愛国運動をも“右翼の妄動”と決め付ける左翼史観に立脚したものであることを明確に認識すべきである。

 偏向した歴史観を排せよ

 歴史教育で最も重要なのは、特定の史観に立脚しない中立、公正な立場に立つことである。偏向した自国中心主義も左翼史観もともに排されるべきだ。

(4月9日付社説)