どう防ぐ児童虐待
衆議院議員 石﨑徹氏
適正処罰と親の教育を
虐待によって幼い命が奪われる事件が相次ぎ、「児童虐待罪」の創設や児童虐待の厳罰化を求める声が上がっている。超党派若手勉強会の呼び掛け人代表・石﨑徹衆院議員(自民)は、児童虐待ゼロを実現するため、罰則を設けることによる加害者の適正処罰や、親の教育の必要性を強調した。(聞き手=政治部・亀井玲那)
児童虐待をなくすため、現行制度に不足している点は。

いしざき・とおる 1984年、新潟県生まれ。慶応大法学部卒。2007年、財務省に入省、12年衆院選で初当選。衆院予算委員、自民党厚生労働部会長代理、人工知能未来社会経済戦略本部事務局長など。衆院新潟1区、当選3回。
平成15年から29年までに、727人の子供が虐待で亡くなった。加害者への刑罰は、平成に入ってから死刑が1件、無期懲役が2件、懲役30年が1件だ。虐待は常習性・継続性があり、何年も苦しみを与えて最終的に殺してしまう。これはほかの殺人や傷害致死とは全く違う。既存の法体系の下で、判決にそれが加味されているかというと、そうではない。虐待特有の加重規定もない。
日本で刑法上の暴行罪や傷害罪における保護法益は「身体の安全」だが、諸外国では子供の福祉や健全な発達も保護法益と認められている。日本でも認めるべきだが、残念ながら刑法改正には法制審を開くなど長いプロセスが必要だ。
われわれの勉強会でまとめた緊急中間提言の八つの論点を政府に早急に検討していただきたい。また、われわれの勉強会も国民世論を喚起しながら、議員立法はじめ引き続き精力的に活動していきたい。
罰則規定を設ける意義は。
児童虐待ゼロは政府の目標でもあり、児童相談所の拡充などは当然すべきだが、プラスアルファまでやらないと、ゼロにはならないだろう。刑法上に児童虐待罪を新設するか、個別に法律を作るかして、加害者を適正に処罰していく必要がある。厳罰化と言っているが、要するに「適正処罰」。社会規範を変えていく意味でも重要だ。
罰則はどの程度を想定しているのか。
私は既存の傷害罪、暴行罪、傷害致死罪よりも重くすべきという立場だ。虐待致死罪の最高刑は無期懲役でよいと思っている。死に至るケースでは、基本的に未必の故意があると思う。裁判の中でもう少し故意の認定をしてもいいと思うが、現状では難しいなら、やはり虐待致死罪を設けた方が、判決を下しやすくなるだろう。
虐待そのものに対しても罰則を設けるのか。
児童虐待罪というのはあっていいが、その上で、児童虐待致死罪、児童虐待重傷化罪などの加重規定を設けるべきだ。死に至らしめたり、重傷を負わせた場合を厳罰化して、適正に処罰することに射程を置いている。
性的虐待についても同様で、被害を受けた子供は心理的に相当な傷を負うが、適正に処罰されていないケースがたくさんある。強制性交等罪は保護者によるものも同様とする規定があるが、同様ではなく、より重くすべきだ。
虐待を未然に防ぐために必要なことは。
児童相談所の拡充や189(児童相談所全国共通ダイヤル)の無料化など、種々の政策は一刻も早くやるべきだ。未然に防ぐという点では、児童相談所が介入した後、親に更生プログラムなどの教育を施す必要がある。既に取り組んでいるところもあるだろうが、これをしっかりやらないと、子供を帰した後、虐待が悪化するケースもある。また、学校などでの教育も重要だ。虐待が非常に重いものだと社会で啓発していくべきだ。
構造的にも、核家族化で親も頼るところがなくなりつつある。子育て支援の拡充に加えて、心情的な面でも、子供に寛容な社会をつくっていかないといけない。





