「国民党」船出から波高し

 「政権交代を目指し、国民主権を実現する。明るく元気に新たなスタートを切る」。民進党と希望の党が合流して立ち上げた「国民民主党」の設立大会が7日、東京都内のホテルで開かれ、希望の玉木雄一郎代表と共に共同代表に就任した民進の大塚耕平代表が決意表明でこう語った。会場には多くの若手自治体議員らが参席し空席を埋めたが、拍手の音もまばらで、盛り上がる場面がないまま終了した。大塚氏はしきりに「国民主権」を強調するが、果たして新党が現政権に代わる政党として国民の選択肢になり得るのか、はなはだ疑問との声は多い。両党議員の約4割が不参加の新党は、船出から高波に見舞われている。
(政治部・岸元玲七)

国民不在の政策転換
野党の核、思惑外れ

 両党執行部は、衆参両院での野党第1党を目指し新党への参加を呼び掛けた結果、両党所属議員107人のうち、衆院が39人、参院が23人の計62人が新党に参加した。党は、大塚、玉木両氏の共同代表で運営し、任期終了となる9月までに代表選を行う。

大塚耕平氏(右)と玉木雄一郎氏

握手する国民民主党の大塚耕平(右)、玉木雄一郎共同代表=7日午後、都内のホテル(森啓造撮影)

 新党は、民進を存続させ、希望が解散し、その一部を吸収する「存続合併」の形を取り、民進の保有資産や地方組織を新党が引き継げるようにした。民進は7日、衆院会派「無所属の会」の岡田克也代表や野田佳彦前首相ら27人の離党届を受理。そのうち福田昭夫衆院議員や小川敏夫参院議員会長ら10人(うち参院9人)は立憲民主党に入党届を提出した。

 「国民生活を向上させ、民主主義を高め、今の国会を健全な姿にしていく」

 大塚氏は4月26日、「国民民主党」結成文書に署名し、新党に懸ける思いを述べた。与党の相次ぐスキャンダルに対して野党が一丸となり政権追及すべき時に、新党づくりに躍起になっていたことに不満を抱く野党議員は多い。

 民進・希望両党は1月中旬、今国会での統一会派結成に合意したが、民進内からの反発で協議は打ち切り。両党執行部は4月上旬に新党協議会を発足させ、与党に対抗する「大きな固まり」を目指したが、衆院で56人の立憲民主党には及ばず、参院でも公明党(25人)を下回る第3会派に落ち込んだ。野党結集の核となるはずが、思惑は外れた形だ。

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 新党の基本政策についての問題点も指摘されている。原発政策では「2030年代ゼロ」、憲法改正は「自衛権行使の限界を曖昧にしたまま憲法9条に自衛隊を明記することは認めない」、現行の安全保障法制は違憲とされる部分の「白紙撤回」と記した。安倍晋三首相が改憲勢力と期待していた希望は、昨年の衆院選で安保法制容認を掲げた。新党に合流する議員らが「自衛隊の明記を認めない」とするのは票を投じた国民に対して非礼と言わざるを得ないとの指摘もある。

 民進の最大の支援労組の連合(神津里季生会長)は、組織票の分散を避けようと野党の結集に力を注ぐ。4月28日に東京都内で開かれたメーデー中央大会で神津氏は「バラバラの野党にも大きな責任がある」と民進系3野党結集が実現しない状況にいら立ちを見せた。来夏の参院選で、旧総評系は私鉄総連、日教組がそれぞれ立憲から組織内比例代表候補を擁立する。旧同盟系の多くは国民民主党を支援するとみられ、支援政党が二分する可能性がある。

 両党の支持率は1%に満たず、共に低迷。大塚氏は「ゼロからのスタートだ。支持率は気にしない」と強気を見せる。国会での存在感を発揮しようと野党第1党の座を狙ったが叶(かな)わず、他の野党の反応も冷ややかで野党結集には程遠い状況だ。

 新党綱領には「国民が主役の中道改革政党を創る」とある。できるだけ多くの参加者を集めるための政策軸を欠いた新党結成の動きに「国民が主役」という理念は見えてこない。