女性議員比率166位では 日本は民主の旗を振り難い

山田寛の国際レーダー

山田 寛

 

 「うれしいことに、世界の女性国会議員の比率が25・5%と、初めて4分の1を超えた」。今月初め、「列国議会同盟」(IPU=各国議会の国際組織)の事務局長が発表した。今年1月現在の各国の1院または下院の数字である。

 だが日本は蚊帳の外だ。女性議員は9・9%で190カ国中166位。過去最低ランクである(01年は117カ国中80位、11年は142カ国中96位)。

 ランク1位はルワンダで61・3%、次いでキューバ53・4%、アラブ首長国連邦(UAE)50%、ニカラグア48・4%。ルワンダは、94年の大虐殺後の男手欠乏のため、03年に議員、閣僚、裁判官などの30%以上を女性とする新憲法ができた。以来トップである。

 近年、女性国会議員クオータ(割り当て)制が広がり、世界の130カ国以上が、①法律で女性の議席数、立候補者数を割り当てる、②政党が綱領などで候補割り当てを決める――クオータを導入している。その効果はもちろん大きい。

 女性力は、保健、教育、福祉などを確かに前進させる。ルワンダ国民の平均寿命は、過去20年に48・3歳から69・4歳へと大幅上昇、サハラ以南のアフリカ大陸でトップになった。

 でも即民主主義拡大とはつながらない。米NGOの「世界の自由度調査」では、上記のベスト4はみな「不自由国」だ。中国(86位)、北朝鮮(128位)などはもともと別世界の議会だが、ベラルーシ22位、ラオス65位、アフガニスタン71位、サウジアラビア119位なども、「不自由」の代表選手だ。独裁・強権政権や家父長制社会が、クオータで女性議員を増やしても、それだけではダメなのだ。

 日本でももちろん保健・教育その他の一層の前進が期待されるが、むしろより大きく、民主主義国家日本のために重要だと言いたい。日本は民主・人権への中国の挑戦を抑える旗振り役として、一大責任を背負いつつある。「女性差別代表国」と見なされたら、旗を高く振れるだろうか。

 東京五輪組織委会長だった森喜朗氏の女性差別発言問題に対し、外国メディアは「日本に深く根を張る男尊女卑の表れだ」と強調した。女性議員比率や、世界経済フォーラムの男女格差ランキング(153カ国中121位)が例証にあげられた。

 韓国は「慰安婦=性奴隷強制連行」問題を叫び続け、中国も先週の外務省会見でまたそれを援用し、日本の対中国人権非難を牽制(けんせい)した。歴史戦、人権戦を戦うために、女性差別イメージを打破する必要がある。

 日本でも18年に「政治分野における男女共同参画推進法」が施行され、議会選挙で男女の候補者数ができるだけ均等になるよう目指すことが決まった。クオータ制までは行かないが、一昨年の参院選では一応、全候補者に占める女性比率は過去最高の28%台になった。だが道は遠い。特に与党側の熱が低い。

 今年行われる衆院選の候補者予想では、昨年末時点の共同通信の調査で、約16%が女性といった数字も出ていた。これだと4年前の前回衆院選の17・7%すらも下回る。

 メディアも言葉狩りより、こうした本質的問題で政治の尻をたたくべきだ。だが、90年代半ば、私が勤めていた新聞社の役員と部長級以上の社員の忘年会に招かれた女性歌手が「黒っぽい背広の男性だけ。暴力団の会合かと思った」と言っていたのを思い出す。今は多少変わったが、暴力団集会に間違われる可能性はまだまだある。

 女性議員数問題は先延ばしできない課題だ。各政党、特に自民党は次の衆院選で「共同参画推進法」の実行にもっと真剣に取り組んでほしい。

(元嘉悦大学教授)