五輪成功でも心配、難局での日本の気力


山田寛の国際レーダー

山田寛

山田寛

 「日本以外はできなかっただろう」(パーソンズ国際パラリンピック委会長)の言葉と共に、東京五輪・パラの夏は成功裡(り)に過ぎたが、印象に残った開会直前の米紙報道と国際世論調査を取り上げたい。ロサンゼルスタイムズの記事と多国籍調査会社IPSOSの28カ国調査である。やれる力は十分あるが、難局の前では気力不足の日本の姿がそこに表れていると思うからだ。

 前者は「日本選手は今や世界の注目の的。東京五輪で日本はスポーツ黄金時代を迎えつつある」という内容。野球の大谷翔平、テニスの大坂なおみ、バスケットの八村塁、ゴルフの松山英樹、サッカーの久保建英、ボクシングの井上尚弥など世界で躍動する選手たちの思いや抱負を詳しく紹介している。また「大坂への賞賛(しょうさん)など20~30年前には想像できなかっただろう」と述べ、ミックス選手たちの活躍にも焦点を当てている。“スポーツ大国に邁進(まいしん)する日本”賛歌の心強い記事だった。

 だがIPSOSの数字を見てガックリした。日本は「コロナ・パンデミックの中で東京五輪を開くべきか」で、「はい」が22%で下から2番目(28カ国平均は43%、ビリは韓国14%)。「パンデミックに続く東京五輪は世界が集う重要な好機になると思うか」でも、31%で下から2番(平均は62%、ビリは韓国26%)。「五輪は自国内を結集させるか」では、36%でビリ(平均は65%、1位は中国92%)だ。

 日本よりコロナ感染の酷(ひど)い国が沢山あるが、はるかに東京五輪に期待していた。

 開催国が感染拡大を心配するのは当然だし、左派の反対運動もあったが、余りにも否定的・消極的過ぎた。

 但(ただ)し大会が進むと日本の世論は一変。日本選手の大活躍もあり、外国選手との心の交流や胸を打つ話が沢山伝えられ、「やってよかった」論が大逆転した。

 実際、メダルラッシュや大谷選手のホームランを見て勇気をもらい、「自分も」と張り切った青少年は多いだろう。“祭りの勢い”に乗った盛り上がりで、日本は本当にスポーツ大国になれそうだ。そんな底力は十分あろう。

 だが「よかった」だけでよいだろうか。

閉会式で打ち上げられた花火=8日、国立競技場

閉会式で打ち上げられた花火=8日、国立競技場

 調査結果で最も気になるのは、否定・消極回答が、諸事万端で日本国民の難局や危機に挑む気力・活力、“明日への希望力”の弱さを反映していると思われることだ。

 因(ちな)みに、最近公表された経済協力開発機構(OECD)のメンバー38カ国の自殺率では、韓国が断トツ、日本も5位。また世界202の国・地域の合計特殊出生率では、202位が韓国で日本も186位である。

 そして一昨年秋に日本財団が日中印韓米英独など9カ国で行った「18歳意識調査」。「自国の将来はよくなるか」「将来の夢があるか」「自分が国や社会を変えられると思うか」などの質問で、日本は全部ビリだった。「国がよくなる」と思う者は、トップの中国は96%で日本は9・6%だ。また日米中韓4カ国の青少年世論調査などでは、いつも米中が積極、日韓が消極だった。

 さらには10年以上前だが、私が二つの大学で行ったアンケート調査も思い出す。外国に侵略されたらどうするか。留学生は「国を守るため戦う」が6割だが、日本人学生は7分の1。「態度未定」「自分はできるだけ普通の生活を送る」「外国に避難する」が各3分の1~4分の1で拮抗していた。

 今回の五輪調査結果を見て、いざ鎌倉の際の日本人、特に若者のひ弱さは何とかならないかと改めて思った。反日活力だけが加速する韓国も心配だ。そこで結語は「日本の青少年よ活力を増やせ」(余計なお世話と言われそうだが、韓国の青少年も)。