「イグ・ノーベル賞」を京都工芸繊維大学の村上久助教(34)ら日本の研究チーム4人が受賞した。
ユニークな科学研究に贈られる「イグ・ノーベル賞」を京都工芸繊維大学の村上久助教(34)ら日本の研究チーム4人が受賞した。歩きながらスマートフォンを操作する「歩きスマホ」が、通行の妨げになることを実験で裏付けた。
村上氏らは27人ずつの2グループ、計54人の歩行者が、幅3㍍、長さ10㍍の道路を擦れ違うように歩く実験を繰り返し実施。少数でもスマホに集中する歩行者がいると、歩行者同士がぶつかるのを避けることが難しくなる仕組みを解明。衝突という現象を分析した。
イグ・ノーベル賞は1991年、英国の科学雑誌編集長が創設。「面白いが埋もれた研究業績の発掘」を目的に、ファラデーら市井の科学者が伝統を築いた英国ならではのイベントとして定着。日本と英国の学者らが多く受賞している。
村上氏に似た実験を、戦前の物理学者・寺田寅彦が行っている。東京の路上電車内の混雑ぶりを考察して「来かかった最初の電車に乗る人は、空いた車に逢う機会よりも混んだのに乗る機会の方がかなりに多い」。それが混雑を増していることを突き止めた。
一見、何の変哲もない実験・観測に見える。しかし、90年前後から欧米を中心に世界的に研究されるようになった高速道路の車の渋滞、デパート内の火事の避難の在り方などを探るための先駆的な研究となった。
村上氏ら日本の若手研究者らに、寅彦の優れた観察力と直観力が引き継がれていることを信じたい。