北ミサイル発射で韓国揺さぶり
北朝鮮は3月21日に平安南道・温泉から西海(黄海)に向け対艦巡航ミサイル2発を発射した後、25日午前には、咸鏡南道・咸州から東海(日本海)に向けて弾道ミサイル2発を発射した。
巡航ミサイルは国連安保理決議の違反ではないが、弾道ミサイルは安保理決議の違反である。北朝鮮の弾道ミサイル発射は昨年3月29日以降、初めてだ。
今回の相次ぐミサイル発射の背景はまず、米国に対する威嚇であり、バイデン政権の出方を試みる狙いだろう。北朝鮮は16日、金与正労働党副部長の談話で、米韓合同軍事演習を「侵略的な戦争演習だ」と非難しつつ「南朝鮮当局(韓国)は再び“戦争の3月”を選択した」と危機を煽(あお)った。
トランプ前米大統領は2度の米朝首脳会談を通して北朝鮮を中国から切り離し、親米国家に誘導しようと試みた。しかし、バイデン大統領は昨年の選挙期間中に金正恩総書記を「ならず者」などと呼び北朝鮮体制を非難しており、人権問題で圧力を強める構えだ。
一方、北朝鮮は19日、クアラルンプールに滞在中の北朝鮮人を国連制裁違反などの容疑で逮捕し、17日に身柄を米国に引き渡したマレーシアに対し、国交断絶を宣言し、「米国も代価を払うだろう」と強く反発している。
北朝鮮は昨年4月15日の韓国総選挙に先立ち、3月に4回、短距離巡航ミサイルを、さらに選挙前日の14日にも短距離弾道ミサイルを発射した前例がある。今回も4月7日投票のソウル・釜山両市長選をにらんだ揺さぶりではないかと考えられる。
昨年の韓国総選挙と関連して、北朝鮮は昨年4月12日以降、いわゆる“金正恩死亡説”を流して、韓国政府・与党の大掛かりな不正選挙疑惑を追及する世論を分散させた前例もある。
今年4月のソウル・釜山市長選は来年3月の次期大統領選の前哨戦であり、その試金石となっている。北朝鮮の対南情報心理戦の脅威を改めて警戒すべきである。
(拓殖大学主任研究員・元韓国国防省分析官)