北の極超音速ミサイルに備えを
年明けの1月6日、北朝鮮の朝鮮中央通信は「共和国は前日、極超音速ミサイルを試験発射した」と報じた。
北朝鮮は昨年9月28日、極超音速ミサイル火星8型を試験発射しており、今回発射したミサイルはマッハ5(音速の5倍)以上の速度を出したという。
北朝鮮の主張通りの極超音速ミサイルなら、現存する韓米連合軍の地対空ミサイルでは迎撃が難しい。これが戦力化されたら、北朝鮮はゲームチェンジャーの兵器を保有することになるわけだ。
弾道ミサイル技術は日進月歩で、米国は昨年9月27日極超音速ミサイルを試験発射し、ロシアも昨年7月に極超音速巡航ミサイルを試験発射。中国も2019年10月の建国70周年記念式典で極超音速ミサイルDF(東風)17を初公開している。
金日成首相・国家主席は46年間の在任中9回のミサイル発射を行ったが、金正日総書記は父の死後17年間に22回、後継の金正恩氏は10年間に62回も発射するなど、ミサイル開発に力を注いできた。
ただ今回、北朝鮮のミサイル発射現場には国防科学院と労働党の軍需工業部幹部らは出席したが、正恩氏は姿を見せなかった。 昨年10月19日の新型潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の発射実験現場にも現れなかった。さらに、就任10周年を迎えたにもかかわらず、20、21年に続き、今年の元日も新年の辞を発表しなかった。
このように異例なことが続く背景について、さまざまな推測がなされているが、現在の北朝鮮は軍部強硬派が主導権を握り、正恩氏は操り人形にすぎないという見方まで出ている。
いずれにせよ、北朝鮮の今回の極超音速ミサイル発射は米朝融和路線を拒否する軍事挑発であり、北京冬季五輪を控えた中朝関係にも悪影響を及ぼすものだ。
韓国国防省は今回の発射は極超音速ミサイルでなく通常の弾道ミサイルだと過少評価しているが、弾道ミサイルは北朝鮮の得意分野である。
今回のミサイルの射程は700キロだが、「発射体を交換すれば3000キロまで十分射程を伸ばせる。すると、半島だけでなく沖縄の在日米軍基地や米国領グアムまで打撃できる」との分析もある。
核を持たない韓国と日本は、日米同盟と韓米同盟を柱とした日米韓の安保協力態勢を強化し、抑止力を再整備しなければならない時を迎えている。
(拓殖大学主任研究員・元韓国国防省分析官)


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