日本狙う北の弾道ミサイル
今年10月15日、米国防情報局(DIA)は「2021北朝鮮の軍事力」という報告書を出した。
主な内容は、北朝鮮を米国の切迫した脅威と見なし、北朝鮮は韓国と日本を標的とするスカッドミサイルと準中距離弾道ミサイル・ノドンを配備していると指摘した。
また、10月18日には米国の代表的な民間シンクタンクであるヘリテージ財団が「北朝鮮の核ドクトリン」という報告書を公表した。
同報告書でも、北朝鮮は有事の際に米軍と国連軍による日本の港湾、空港、基地の使用を封じるため、日本に対する核攻撃を仕掛けると指摘した。
金正恩は2017年、長距離弾道ミサイル発射の際に、「このミサイルは在日米軍基地攻撃を意図している」と言明した。また、労働新聞などの報道機関は、核攻撃の標的として東京、大阪、横浜、名古屋、京都を具体的に挙げたことがある。
有事の際に在日米軍基地が狙われる背景は、朝鮮戦争の時、釜山が陥落寸前の戦況で、連合軍の反攻の突破口を開いた仁川上陸作戦部隊が出港したのが横須賀、神戸、佐世保だったからだ。
北朝鮮は9月だけでミサイルを4回発射しており、今年に入って7回に上る。つまり、9月11日に長距離巡航ミサイルを発射し,同15日には列車搭載弾道ミサイルを発射。9月末には、極超音速ミサイルとSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)を試射するという、異例のミサイル連射を繰り返した。
2019年11月、米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)は、北朝鮮のミサイル基地を13カ所特定した上で、「ノドン・スカッドなど短距離ミサイルに搭載できる核弾頭の小型化技術の開発を継続している」と明らかにした。
北朝鮮の核保有は日本、韓国、台湾の核武装に名分を与える。日、韓、台の核武装こそ、中国が最も怖がる最悪のシナリオである。従って、米国は核ドミノを防ぐため、日本・韓国の核武装という外交カードを中国に示し、北の核廃棄を働き掛けるという駆け引きが選択肢となるだろう。
韓国は米国主導のМD(ミサイル防衛)システムへの加入が必要不可欠である。これに伴い、米国は北朝鮮が万が一、在韓・在日米軍基地に核攻撃したら、核の反撃を浴びるという脅威を感じるように、核抑止力を増強して「恐怖の均衡」を備えるべきである。
(拓殖大学主任研究員・元韓国国防省分析官)