最悪事態に備え早急に法整備を
新型コロナウイルス感染拡大の対応に追われる日本や米国の隙を突き、中国の公船である海警船がこのほど、尖閣諸島沖の領海侵犯をしただけでなく日本漁船を追尾するという行動に出た。中国の戦略にどういう変化があるのか、日本はどう対応すべきかなどについて探った。(社会部・川瀬裕也)
中国海警船 尖閣沖で日本漁船追尾
5月8日、尖閣諸島の接続水域内を航行していた中国海警局の公船4隻が日本の領海に侵入した。そのうち2隻が、操業中の日本漁船1隻に接近、追尾した。さらに9日に再び2隻が領海に侵入し、翌10日まで居座った。
海上保安庁によると昨年、尖閣諸島沖の接続水域で確認された中国公船は延べ1000隻で、過去最多を記録。今年1~4月は381隻で、昨年同期間(286隻)を大きく上回るペースとなっている。領海侵入は今年1~4月で延べ28隻に上る。しかし、今回は侵入にとどまらず、日本漁船を追尾。中国の報道官は「日本漁船が中国領海内において違法操業をした」と語った。
海保は、中国公船の大型化が進み、5000㌧級以上の公船が尖閣領海に侵入したケースは過去もあったと伝えている。ただこのところ尖閣周辺を航行している公船の中には大口径の砲らしきものを備えているものもあり、今後、海保の巡視船だけでは対処できない事態になることも想定される。
これについて香田洋二元自衛艦隊司令官(海将)は、「習近平指導部は、さらに厳しい物理的活動の一歩を踏み出した」と指摘。今後、追尾にとどまらず、「拿捕(だほ)・身柄と船舶の拘束、さらには中国の国内法を適用した裁判に出る事態も予測される」と警告した。
また、沖縄の安全保障に詳しい元在沖縄米軍海兵隊政務外交部次長のロバート・D・エルドリッヂ氏は、挑発行為を繰り返す中国の狙いは、「尖閣の実効支配だ」と強調。同氏は、「日本が何もしなければ、中国が簡単に(尖閣諸島を)軍事施設として造れる」と語った。
 これは南シナ海で実効支配を強める中国の現状を見ても明らかだ。尖閣の実効支配は、最終的に沖縄の米軍撤退を狙う中国の戦略であり、今回、その歩を進めた可能性が大きい。
今後の日本の対応について、エルドリッヂ氏は、公務員の常駐や、政府の灯台、観測所の設置などを指摘。また、香田氏は、対処方針を早急に定めるべきだとし、最悪の事態に備え、自衛隊の活動を定めた法制度の整備を早急に行うことや、台湾との人的交流をはじめとした、戦略会議や共同演習などの「軍事交流」を活発化することも「中国を牽制(けんせい)する上で非常に効果的である」と語った。
さらに、南西諸島安全保障研究所の奥茂治所長は、4月1日に発足した、離島の警備に当たる沖縄県警の「国境離島警備隊」を尖閣諸島で訓練させる必要性などを挙げた。






を搭載した1万㌧級の中国公船。船体に「中国海警」「2901」の文字(海上保安庁提供).jpg)





