玉城沖縄県政の空騒ぎ危惧

西田 健次郎OKINAWA政治大学校名誉教授 西田 健次郎

保守を名乗る資格なし
説明すべき政治的立ち位置

 よもや、まさか、玉城デニー氏が沖縄県知事になるとは。ショックが大き過ぎた。筆者は関西弁も関西人も大好きだが、大阪府民が芸人の横山ノック氏を2期も知事に選んだのには理解不能だった。

 沖縄県民も人ごとではない。国会の委員会所属も質問もままならない無所属の国会議員を革新陣営から3~4人も送り出してきている。彼らは政党政治、国政の仕組み、実態を知らず、反日反体制の活動家レベルで国会よりも反対闘争(辺野古移設や中城湾埋め立て工事、新石垣空港建設、自衛隊配備など)の現場でこぶしを振り上げているのを生業(なりわい)にしている国会のご仁たちでしかない、との罵(ののし)りが永田町の声だ。

 その上で、革新系県知事を2期連続で誕生させてしまったのである。

 9月30日に投開票された知事選は、日本と沖縄の明日の歩むべき政策論争にはならなかった。その代わり、玉城候補の傍らに翁長雄志前知事の遺影と帽子を飾り、未亡人の樹子夫人を登場させた弔い合戦だった。それをメディアは巧妙に演出したもので、佐喜真淳(自公維希推薦)VS玉城デニーという候補者の争いではなく、翁長VS佐喜真の戦いにすり替えられてしまった。

 普天間基地の危険性除去を早急に解消すべく、22年前に国・県・地元の三者合意が自己決定権によって国家間の条約として結論をみた。普天間基地の3分の1に規模は縮小され、V字型の滑走路を海に造り、より安全な飛行場になり、しかも、嘉手納基地以南の米軍基地の大半が返還されるのである。都市部にある米軍基地の跡地利用によって予想以上の沖縄の経済発展への壮大なロマンが展望できるのである。

 それなのに、玉城知事や翁長氏を支持してきたオール沖縄(今やハーフ沖縄)陣営は、「代替施設」という表現を使わず、「新基地建設」との誤ったレッテルを貼り、地元メディアも連日、大合唱している。情けない限りだが、その喧伝が定着しているようだ。

 玉城知事は、弔い合戦で圧勝した後、ただちに訪米し、パフォーマンスをしたが、アジアと我が国の安全保障の現実に理解が足りないのではと思慮せざるを得ないので、苦言を呈しつつ質問したい。

 まず、玉城知事は訪米前に、米国政府の要人と有力国会議員に会うことよりも、日系人に沖縄の声を届ければいいとコメントしていたが、日系人の前でカチャーシー(沖縄の祝いの踊り)を踊りに訪米したのか。

 しからば、南シナ海を占拠し、次は東シナ海に中華帝国の覇権を構築すると中国共産党は公言し、一帯一路の世界戦略で中国は人口・軍事・経済で米国を凌駕(りょうが)するしたたかな狙いがある。軍事予算は30兆円超になり、米国・日本のみならず、近隣諸国、いや世界規模の喫緊の脅威が事実である。玉城知事はこの安全保障環境を学習すれば、代案のないまま辺野古移設反対に命を懸けるとか、普天間基地の即時閉鎖のための対話うんぬんは反体制活動家のパフォーマンスでしかないことが分かるだろう。

 今回の訪米も逆に、米国政府の軍事の衝(しょう)にある高官たちは、玉城知事の訴えを一顧だにせず、沖縄に関する特別行動委員会(SACO)合意の推進こそが普天間基地の早期移設への唯一の道だとするアピールに利用される結果となってしまった。このことをどう、有権者に説明するのか。

 それから、玉城知事が所属していた民主党政権時の鳩山由紀夫首相が「最低でも県外」と公言したのが、辺野古移設作業が混迷し20年も遅れている要因だ。しかも、鳩山氏は勉強してみたら「抑止力」は必要であり、やはり辺野古にお願いしたいと変節した。

 玉城知事は、民主党の変節と自らのことを説明する責任がある。

 玉城知事の政治的立ち位置を明らかにする必要がある。自らを「保守中道」と言っているが、保守とはこういうことだ。我が国日本の美しい伝統・文化・世界一・安全安心で清潔でやさしい郷里をこよなく愛し、誇りを持つ国民。「日の丸」と「君が代」にも誇りを持ち、皇室を崇敬する。日米安保体制による世界平和の維持を求める。そして、人権も自由民主主義もない中国や北朝鮮のような共産党独裁体制(既に中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は実質的には皇帝である)と敢然と戦う確固たる思想信条が保守の原点なのだ。

 共産党のソフト戦術で踊っている玉城知事に保守を名乗る資格はないと断定した上で、次の質問をしたい。

 ①日米安保体制と集団的自衛権について②皇室について③共産党が解体を主張する自衛隊について④覇権国家中国の世界戦略について⑤尖閣は中国固有の領土であり沖縄を明朝・清朝時代の冊封体制に戻すという中国共産党の公言について⑥自衛隊の南西諸島配備と国家防衛について⑦国会議員時代、消費税反対とか関税ゼロとか発言していたが、現下の日本の社会保障、医療費、少子高齢化の厳しい財政状況にどう向き合うのか。関税ゼロでは離島のサトウキビ産業は成り立たなくなる。

 最後に聞きたいのは、「沖縄のアイデンティティー」というが、それは具体的に何なのか、説明すべきだ。

(にしだ・けんじろう)