小4男児自殺は「いじめが主因」
沖縄・豊見城市、第三者委が調査報告書
2015年10月に沖縄県豊見城(とみぐすく)市の小学4年の男児(当時9)が自殺したのは、繰り返された「いじめが主な要因」とする調査報告書を、市教育委員会が設置した第三者委員会がこのほど公表した。自殺を防止できなかった学校の対応を「不適切」と批判した。(那覇支局・豊田 剛)
学校と市教委の「隠蔽・保身」批判
男児は2015年10月12日に自宅でベルトを首に巻いて自殺を図り、1週間後に亡くなった。両親が真相解明を強く要望していた。
報告書によると、男児は15年5月から10月にかけて、ズボンを下ろされ、引き出しを勝手に開けられ、服を引っ張られるなど、心身の苦痛を感じるいじめが少なくとも5件あった。これらは、いずれも担任の教諭が把握していたものだ。
報告書公表までの道のりは長かった。自殺の翌月、市教委は「豊見城市いじめ問題専門委員会」と称する第三者委員会を組織し、弁護士など5人を委嘱したが、わずか4回の会議を重ねただけで、全員が辞任した。
自殺を図る2週間前のアンケートには男児は「いじわるをされたりぬすまれたりしていやになっててんこうをしようと思っているんのですがどうしればいいんですか」(原文のママ)と書いていた。
しかし、担任は適切な対応をせず、校長は男児の自殺後も「どんなにアンケートをしても、いじめの様子は出てこない」とのメールを職員に送った。「トラブルであっていじめではない」と認識し、学校ぐるみで事実関係を隠蔽(いんぺい)しようとした疑いがある。それに加え、「両親から虐待を受けている」など、根拠のない偏った情報が広がっていたことも明らかになっている。
極め付きは16年1月に開かれた第三者委の記者会見だった。「学校のアンケート調査ではいじめの認定はなかった」「一般的ないじめはなかった」との見解を示した結果、遺族や地域の信頼が大きく揺らいだことでの辞任という形だ。
文部科学省基本方針の第28条に基づき、「いじめによる自死(「重大事態」)が疑われる本件につき、その背景にある事実関係を明確にし、その結果を報告書にまとめること」を目的に、市教委は16年3月、弁護士、精神科医、大学教授、臨床心理士、社会福祉士、保護司の6人で構成する新たな第三者委を発足させた。30回もの検討委員会を開いた後、約2年の歳月を経て、ようやく今回の公表に至った。
その内容は「適切な対応を怠った」として学校と市教委を厳しく批判する内容だ。
学校については「自らを正当化し、保身を図る行為。教育者としてあってはならない」と批判。市教委についても「学校と一枚岩になって、同校を守ることに腐心していた」と非難した。
第三者委委員長の天方徹弁護士は「学校と市教委は完全にタッグを組んで、学校や教員を擁護する対応に終始した」と述べた。
いじめが原因と疑われる症状として、好きだったエイサー(沖縄の伝統芸能)グループの退団、宿題未提出、体調不良などを挙げた。また、傷つきやすい本人の特質があったことも指摘した。
答申書ではいじめがあったと認定されたことを受け、照屋堅二教育長は記者会見で、「自殺を予想することは容易ではないが、結果的に防ぐことができなかった」と悔いた上で、「学校において適切な対応をすべきだったと結論付けられたことを真摯(しんし)に受け止め、尊重したい」と、遺族や関係者に詫(わ)びた。
保身を図ったのではないかという批判には「資料はすべて提供した」と反論。適切な対応をしていれば自殺を防げた可能性があったとの指摘には、「結果論としては受け止める」と述べるにとどめた。
報告書の公表を受け遺族は「真相解明や事情説明を求め続けてきたが、学校や市教委から誠意のある対応はなかった。いじめと自死の因果関係を認めており、報告書の内容は事実に沿ったもので評価したい。今後の対応を待ちたい」というコメントを出した。
市教委は遺族へ説明した上で対応を考えるというが、対応次第では訴訟に発展する可能性も避けられない。