「第三の性教育」が必要

高橋 史朗

 

 高橋史朗・麗澤大学大学院特任教授の話 性に関する科学的知識や情報を伝えてもらうために、地域の専門家の活用は積極的に行う必要があるが、日常的に子供と接する教員と保護者との共通理解を深め、フォローできるようにする必要がある。

 性非行の背景には、孤独感や無力感があり、この「心の空洞」を埋めるためには、夫婦や親子の絆が必要不可欠であり、それが性教育の大前提となる。「性」とは「生きる心」であり、性をいやらしいものと否定的に捉えて罪悪視したりタブー視するのではなく、性を人間を幸せにするために存在するものとして肯定的に捉える「人間教育としての性教育」が時代の要請である。

 男女交際を「不純異性交遊」などと決め付ける封建的な貞操観や男女観に基づく「純潔教育」でも特定のイデオロギーに基づく過激な「急進的性教育」でもない「第三の性教育」が求められている。

 自己肯定感が外国に比べて低い日本の中高生に「節制」だけを説いても解決にはならない。自尊感情を育み、異性からのピア・プレッシャー(「愛しているなら、どうしてセックスしないの」などの圧力)にどう対応するかという対人関係能力を育てることも大切である。

 子供を取り巻く性情報環境の劇的変化という現実を踏まえて、改めて中学生という発達段階に必要な「人間教育としての性教育」の原点に立ち返りつつ、地域の専門家と保護者との連携を深める「第三の性教育」モデルを構築していく必要があろう。