モラロジー研究所、糸満市で教育者研究会を開く

偉人の教えが日本人の道徳心復活のカギ

 公益財団法人モラロジー研究所が主催し、文部科学省、沖縄県教育委員会などが後援したモラロジー教育者研究会がこのほど、沖縄県糸満市で開かれた。モラロジー研究所講師でNPO法人日本教育再興連盟理事を務める野口芳宏氏は、日本人の道徳心の復活の鍵は、偉人の教えを復活させることだと訴えた。また、元校長でモラロジー研究所講師の細川勝紀氏は「道徳心」について講演した。(那覇支局・豊田 剛)

野口氏 GHQに「消された」と強調

細川氏 教師は心を整えて指導を

モラロジー研究所、糸満市で教育者研究会を開く

「消された偉人」について講演する野口芳宏氏=沖縄県糸満市青年の家

 野口芳宏氏は、「『消された』偉人を考える」と題して、戦後、授業で教えられなくなった軍人、武将、皇室をテーマに講演した。

 教育基本法第9条には、「法律に定める学校の教員は、自己の崇高な使命を深く自覚し、絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない」と明記されている。

 これについて野口氏は講演の冒頭、「使命の自覚」が足りないから教員の不祥事が起きてしまうと指摘。「研究と修養」については、「教師が日ごろ行っているのは『他者改善』を目的とした研究ばかりで、『自己改善』のための修養はしていない」と強調。研究と修養を合わせた「研修」という言葉から、教師は「修養」をイメージできなくなっていると苦言を呈した。

 「国家と国民はどちらが大切か」。野口氏が問い掛けると、若い教師らからは「国民」という答えが返ってきた。野口氏は「今の子供たちは全員、『国民』と答えるが、国家が崩れたら国民の生活は破壊する。国のピンチを命懸けで守るのが軍人」だと説明した。

 軍人の資質は、①強固な意志で死を覚悟する②最高の頭脳を持つ③最高の人格を持つ④体力がある――ことだという。軍人が教科書から消された理由は、「憲法で戦争放棄を決めたから」だと説明した。

 戦前の軍人養成学校には陸軍士官学校と海軍兵学校があったが、それぞれを代表する人物は乃木希典大将、東郷平八郎元帥だ。「日露戦争に負けていれば日本人は日本から追い出され、今の日本の繁栄はなかった」。2人は日本を救った国民共通の大恩人であるにもかかわらず、学校では教えられていない現状を憂えた。

 両氏を道徳教材として扱うポイントとして、①大義に生きる滅私奉公の精神②命を懸ける③高い教養と深い思慮――があり、子供の道徳心を培うのに有効だと指摘する。東郷については、ロシアのバルチック艦隊の司令官が負傷し佐世保に入院した時、東郷は彼をお見舞いし、真心こもった言葉を掛けた。このエピソードに高潔な精神を学ぶことができると考える。

 昭和天皇については、「そのお考えお人柄、国民を愛するお心がなかったら、今の日本の発展、国家としての存続は不可能だっただろう」と話した。

 こうした偉人を「消した」のは、連合国軍総司令部(GHQ)だと強調。「日本が二度と立ち上がれないように徹底的に弱体化した結果が、今の日本の教育だ」と指摘する。

 結果、「恩人の系列」としての伝統としての①家の伝統(家族と祖先の恩)②国の伝統(国家、社会の恩)③精神伝統(先人の学問の恩)――を忘れてしまったと考える。

モラロジー研究所、糸満市で教育者研究会を開く

講演する細川勝紀氏=沖縄県糸満市青年の家

 引き続き、元校長でモラロジー研究所講師の細川勝紀氏が「動物の道徳、人間の道徳、そして人間を超えた道徳」と題して講演した。細川氏は、形も心もないものを「不道徳」、形はあるが内心がないものを「普通道徳」、形も内心もあるものを「純道徳(最高道徳)」と分類。純道徳は人間だけが持ち合わせているもので、「世界宗教の四大聖人の教えが今でも変わらない理由は、純道徳に基づいているからだ」と指摘した。

 教師の指導のあり方は、「教師自身が心を整えてから形式を作るべき」で、「道徳心を育てることを念頭に置いて授業を行うべきだ」と訴えた。

 参加した那覇市の女性教員は、「授業で軍人のことを教えることは今まで考えたこともないが、真実を知った今、史実を正しく教えられるよう努めたい」と話した。

 主催者の和田和久琉球大学教授は、「沖縄は実は尊王心が強い県で、教師たちが道徳の勉強会に参加してくれることは心強い。日本の未来のために貢献できる人を一人でも増やしていきたい」と話した。