沖縄県議選で自公野党健闘

西田 健次郎OKINAWA政治大学校名誉教授 西田 健次郎

翁長派新風会2人落選

「オール沖縄」陰で“内ゲバ”

 本紙既報のとおり、任期満了に伴う沖縄県議会議員選挙(定数48)の投開票が6月5日に実施され、県政与野党勢力が確定した。ただ、今回選挙は米軍基地にからむ予期せぬ事件・事故が続発する情勢下で行われたため、自民党沖縄県連など野党勢力にとってはなんとも難しい選挙にならざるを得ず、自公などは逆風に「耐える守り」の選挙を強いられた。

 県議選と同日には沖縄本島南部の糸満市(人口6万)で市長選が行われ、自民党県連などが推薦する新人無所属の上原昭氏(66)が当選した。自民にとっては先の宜野湾市長選挙に続く市長選勝利である。翁長知事や日本共産党などが主導する「オール沖縄」なる野合集団は、市長選の候補者擁立さえできない「不戦敗」だったことを付け加えておきたい。

 さらに言えば、糸満市区の県議選で、「オール沖縄」を前面に出した共産党の現職女性候補(3期)は落選だった。また、一連の選挙戦を通じて野合集団よろしく「オール沖縄」陣営内では醜い内ゲバが露出したほか、翁長県政誕生を演出したことで、「オール沖縄」の立役者とか、あるいは「象徴」としてもてはやされた那覇市議会「新風会」の県議候補2名も枕を並べて討ち死にした。

 県議選を総じてみると、逆風のなか、自民党や公明党などの野党勢力がどうにか議席確保に踏みとどまったといえる。一方で、マスコミが声高に報じる県政与党勢力の伸長の陰では、「オール沖縄」の内部分裂、内ゲバといった自壊作用が一段と加速する様相を呈し、選挙支援をめぐって企業内部でも互いに不信感が広がっているようだ。

 ここで県議選の経緯と結果に触れる。

 13選挙区(無投票だった定数2の名護市を含む)に71人が立候補して争われた県議選は、経済振興や雇用、福祉、教育、待機児童、こどもの貧困問題など県民生活に直結する多様な政策課題は脇に置かれた感が強く、翁長知事とタッグを組む共産党など相変わらず「辺野古新基地反対」のワンイシュー(一点のみの争点政策)、ワンフレーズを有権者に訴え、新聞、マスコミも肝心の政策論争そっちのけで、与野党勢力比の行方だけに焦点を絞った紙面づくりに走った印象である。

 結果は県政を支える与党系が過半数超の27議席、自民党や公明党の野党系は21議席にとどまったものの、厳しい選挙環境を背景にした自民党各候補は、内容的には健闘したとみていいだろう。自民は実際、推薦の1人を加えて現有議席を一つ伸ばして15になっている。

 また、政党別の得票数では自民が最多の15万4909票(27・9%)で前回県議選より2万票以上多い(沖縄タイムス6月7日付)。これは社民の7万9014票、共産5万7998票をしのいでいる(同)。自民党幹部は、7月の参院選に展望が開ける戦いだったと強調している。

 かといって、7月の参院選では公明党との協力体制がなによりも重要であることに変わりはない。参院選沖縄選挙区は、自民党公認の現職島尻安伊子氏(沖縄担当相)と「オール沖縄」の新人伊波洋一氏らが出馬を予定しており、早急な自公体制構築は論を俟たない。

 では、「オール沖縄」の内ゲバや自壊状況を示してみよう。

 定数2の豊見城市選挙区は3人が出馬、自民現職と、「オール沖縄」を叫ぶ共産新人が当選した。落選したのは社民系無所属の現職である。この候補も「オール沖縄」を唱えたが、誹謗・中傷ビラが選挙戦の最中に多数ばらまかれた。辺野古移設を推進する人物のお店の給水器(ウォーターサーバー)が選挙事務所に置かれたため、「これは辺野古基地推進派の資金協力で、翁長知事への裏切り行為」と断じる内容だ。

 同じ「オール沖縄」陣営からの中傷ビラとみた無所属候補サイドは警察に告発、「全力で犯人を明らかにする」とホームページに緊急声明。「きのうの友はきょうの敵」か。

 中頭郡区では「オール沖縄」の社会大衆党系無所属候補の後援会長を「仲間を裏切り議長席を獲得」と実名入りで非難、候補者ともども「裏切る」とのビラがまかれた。同じく「オール沖縄」陣営の仕業であろう。

 那覇市議会「新風会」は、県議選で四分五裂して半数が自民系候補に回った状況は先だって報告した。残った市議のうち仲松某ら2名が県議選に無所属で出たが、あえなく落選だ。仲松某に至っては、翁長知事、安慶田、浦崎両副知事、ホテル企業のかりゆしグループ、琉球大学病院の医療スタッフ人事で暗躍する大手医療法人など豪華メンバーが応援したにもかかわらず、はるかに及ばなかった。

 もう1人は大手の金秀企業グループが全力投球したが、やはりだめだった。「企業は本気で応援したのか」と疑心暗鬼の声が聞こえる。

 タイムスは「落選」の大見出しを掲げ「翁長県政の立役者 唇かむ」と報じた。琉球新報も2人を「オール沖縄を象徴する」と位置づけ、「今後にしこりを残した」と予測する。

 「オール沖縄」を自称する野合集団の完全崩壊は意外に早いかもしれない。

(にしだ・けんじろう)