沖縄・宜野湾市で「第1回農水産業支援技術展」
琉球大学が農水産業の6次産業化を主導
沖縄県における農水産業の6次産業化のノウハウや技術について学ぶ第1回「農水産業支援技術展」がこのほど、同県宜野湾市で開かれた。県内の知の拠点である琉球大学が主導したもので、県内外の企業が出展する展示会とシンポジウムには農水産業従事者や研究者が多く訪れた。(那覇支局・豊田 剛)
世界見据えたマーケティング、大きい研究機関の役割
実行委員長を務めた琉球大学農学部の仲地宗俊名誉教授は、展示会およびシンポジウムを開催した理由をこう説明した。
「沖縄の農林水産物は亜熱帯の特性を生かしつつさらに付加価値を高めることが大きな課題となっている。農林水産物の付加価値を高めるには、原料の生産、加工、流通の段階において、それぞれに対応した技術と機器、資材の適切な利用が重要だ」
6次産業化とは90年代前半に東大名誉教授の今村奈良臣氏が提唱したもの。農林漁業者が主体となって、生産(1次産業)から加工(2次産業)、流通・販売(3次産業)まで取り組むこと。1と2と3を掛けて「6次」と称される。経営の多角化を進めることで、農山漁村の雇用確保や所得の向上を目指す。6次産業化の取り組みは地域の活性化につながるものとして期待される。
沖縄における6次産業化は、琉球大学農学部を含めた産官学が連携し、事業者が地域資源を生かした新商品の開発や直売所設置による販売などに取り組んでいる。零細企業が多く、製造業に乏しい沖縄にとっては、可能性を秘めた分野となっている。
何か新しいことに取り組みたくてもノウハウが分からない、投資する余裕がないなどの現場の声を拾い上げ、琉球大学は昨年、「地域農業人材養成プログラム」と題する公開講座を開催。新たなアグリビジネスの展開と農産物の生産・加工・流通の仕組みを学び、6次産業化などを通じて地域農業の推進・活性化を担う人材を育成することを目指した。
シンポジウムには実行委員長の仲地氏、琉球大学農学部の川本康博教授、東京海洋大学の廣野育生教授、日本プロ農業総合支援機構(J-PAO)の竹本太郎事務局長が参加した。
仲地氏によると、沖縄の農業産出額は1980年代以降、ゆるやかに減少し、長期的に低迷している。80年代まではさとうきび、野菜、豚が3本柱だったが、90年代初めから作物構成が大きく変化し、花卉や肉用牛が増えた。漁業の生産額も90年代以降、減少傾向にあるという。
沖縄における6次産業化認定件数は昨年度はゼロだったことについて、仲地氏は「生産・観光・販売の数量が少なく、本土や海外との価格競争に耐えられないだけでなく、経営上のノウハウが少ない」ことを問題視。市町村レベルで6次産業化の推進構想と戦略を策定することが肝要だと指摘した。
川本氏は、「沖縄県は農業分野で気候、気温、環境などのポテンシャルがあるにもかかわらず特性を生かしきれていない」と指摘した。その上で、「沖縄県が産業基盤を確立するには6次産業化は必須」と強調。那覇空港の物流ハブを利用して販路拡大することに加え、農業生産額の約半分を占める畜産でバリューチェーンの推進を求めた。
「水産養殖は世界を救う」と説く廣野氏は、世界人口増加に伴い、2050年には動物性たんぱく質は1995年比で4倍必要になると推測。世界市場の拡大を見据えた生産とマーケティングの必要性を訴えた。漁業のコスト高、海産物の感染症対策では大学など研究機関の役割が大きいと指摘した。
竹本氏は、「今の時代、消費者が何を求めているのか見極める目が必要」で、いかに効率的にすぐれた新しい情報を入手し活用できるかなど、基本的ノウハウを学ぶことが大切だと強調した。
パネリストは、6次産業化事業には琉球大学など学術・研究機関の関与が必要だという意見で一致した。







