同性愛者のHIV感染、「制御不能」とデータ示す
エイズウイルス(HIV)の猛威に直面するアフリカ諸国に同性愛の受け入れを迫るオバマ米政権は、同性間の性行為のHIV感染リスクが極めて高い事実に気付いていないかのようだ。だが、オバマ政権はこの事実をはっきり知っている。なぜなら、米国内のデータがそのことを明確に示しているからだ。
米疾病対策センター(CDC)は今年2月、衝撃的な研究結果を発表した。米国の男性同性愛者は6人に1人が生涯のうちにHIVに感染することが予想されるというのだ。男性同性愛者でも感染リスクが特に高いのがマイノリティー(少数派)で、中南米系は4人に1人、黒人に至っては2人に1人が感染する見通しだという。
CDCによると、男性同性愛者は米人口の2%にすぎないが、HIV感染者の実に55%を占める。2014年の新規感染者は4万4073人だったが、このうち男性同性愛者は2万9418人で、全体の67%に達した。
フランス国立衛生研究所は10年に、男性同性愛者のHIV拡大を「制御不能」と指摘したが、まさにその通りの状況だ。
世界保健機関(WHO)によると、14年末時点の全世界のHIV感染者数は3690万人で、その70%に当たる2580万人がサハラ砂漠以南のアフリカ諸国(サブサハラ地域)に集中。子供のHIV感染者数に限ると、その割合は88%に達する。
米厚生省のエイズ問題専門サイトは「HIV拡大は個人の健康のみならず、家庭、地域、国家の発展・経済成長に影響を及ぼす」と明記している。エイズが社会にもたらす甚大なコストをはっきり理解しながら、既にエイズ禍に苦しむアフリカ諸国に同性愛の受け入れを迫るのはなぜなのか。
それはオバマ政権が同性愛者に対する差別撤廃をエイズ対策の中核に位置付けているからだ。国際同性愛者団体の報告書によると、同性愛行為を法律で禁じているアフリカ諸国は54カ国中34カ国あるが、同性愛を合法化することで、今まで隠れていた同性愛者がHIV検査や治療を受けやすい社会環境にすべきだとの考え方である。
潘基文国連事務総長は08年の国際エイズ会議で、「ホモフォビア(同性愛嫌悪)を禁じる法律制定を各国に要求する」と主張したが、国連やWHOでも同性愛者の差別撤廃がエイズ対策の柱の一つとなっているのが実情だ。
だが、同性愛の合法化や差別撤廃がHIV感染率の低下につながるとの証拠はない。同性愛者のHIV拡大が「制御不能」であるならば、同性愛行為を助長するよりも歯止めをかけることが先決であるはずだ。
アフリカで唯一同性婚を認める南アフリカは、世界で初めて性的指向に基づく差別を禁ずる規定を憲法に盛り込んだことから、欧米から性的少数者(LGBT)権利擁護の「模範国」と称賛されている。だが、同国のHIV感染率は世界最悪水準。国連合同エイズ計画(UNAIDS)によると、15~49歳の感染率は02~06年まで20%台で推移し、昨年も19・2%を記録している。
(ワシントン・早川俊行)