オバマのLGBT外交 反発買う価値観押し付け
同性愛への抵抗感強いアフリカ
同性愛者ら性的少数者(LGBT)の国際的な権利向上を外交政策の優先課題に位置付け、途上国にその受け入れを迫るオバマ米政権。各国の伝統や文化を無視し、リベラルな西側の価値観を強引に押し付ける米国に対し、アフリカ諸国などが猛反発している。同性愛をめぐり激化する米国と途上国の「文化戦争」を報告する。(ワシントン・早川俊行)
昨年1月、フランシスコ・ローマ法王が訪問先のフィリピンで訴えた発言が注目を集めた。
「家庭を破壊する思想的植民地化に警戒しよう」
法王の言う「思想的植民地化」とは一体何を指すのか。マニラからローマに戻る機中で報道陣から質問を受けた法王は、先進国が経済援助を利用して途上国に異質の価値観を押し付け、その国を思想的に支配しようとすることだと説明した。
「私は思想的植民地化を直接見てきた」。そう語る法王は、先進国から学校建設の融資を受ける条件として、子供たちにジェンダー理論を教えることを押し付けられた途上国の事例を紹介。子供たちに特殊な思想を教え込むのは、ヒトラーやムソリーニら「前世紀の独裁者がやったことと同じだ」と、痛烈な表現で批判した。
法王の発言は、途上国に同性愛や同性婚の受け入れを迫る欧米諸国の動きを念頭に置いていたことは間違いない。その3カ月前にバチカンで開かれた世界代表司教会議で、アフリカ諸国の司教がこの問題に強い懸念を表明していたからだ。
米調査機関ピュー・リサーチ・センターが世界40カ国で行った2013年の世論調査によると、「同性愛は道徳的に許容できない」と答えた割合は、米国が37%、英国が17%、フランスが14%と、欧米諸国は軒並み低いのに対し、アフリカ諸国はガーナが98%、ウガンダが93%、ケニアが88%と高かった。同性愛に対するアフリカ諸国の抵抗感は極めて強いことが分かる。
そんな保守的な価値観を持つアフリカ諸国に同性愛行為を禁じた法律を撤廃するよう圧力をかける欧米諸国に対し、反発が起きるのは当然のことだ。特に、アフリカ諸国には植民地支配された歴史があるだけに、経済力や影響力を振りかざし、相容(い)れない価値観を強制的に受け入れさせようとする欧米のやり方を「文化帝国主義」と呼んで激しく非難している。
その文化帝国主義の先頭に立つのがオバマ政権だ。民主党大統領候補のヒラリー・クリントン前国務長官は在任中、LGBTの権利向上を「外交政策の優先課題」と宣言。これにより、世界各地の米大使・外交官たちは同性愛活動家と化し、ゲイパレードに参加したり、地元の同性愛者組織を支援することが重要な任務となった。
11年には、在パキスタン米大使館が同性愛者らを招いてLGBTを祝うイベントを開催。同国最大のイスラム政党が「パキスタンに対する最悪の社会・文化的テロだ」と非難するなど猛反発を買った。対テロの重要パートナーであるイスラム教国家で反米感情を煽(あお)ることを平気で行うオバマ政権の無神経さは、多くの人を唖然(あぜん)とさせた。
「米国はわれわれの国を(旧約聖書の神に滅ぼされた淫乱の町)ソドムとゴモラにしようとしている」――。アフリカのキリスト教界からはこんな批判まで出ている。17世紀、英国から信仰の自由を求めて米大陸に渡ったピューリタンは、全世界が道徳的模範として仰ぎ見る「丘の上の町」の実現を目指した。だが、米国は今、オバマ大統領の下で世俗的価値を押し付け、多くの国から軽蔑され、顰蹙(ひんしゅく)を買う国家になった。






