反政府急進派、住民から遊離
二極化する香港 識者インタビュー(9)
親中派団体「愛港之声」代表 高達斌氏 (下)
――結果的に梁振英行政長官が残り2年を続けるだけでなく、17年の行政長官選挙で再選もあり得るか。
梁振英行政長官は残り任期2年が終わっても続投する可能性が高い。就任後3年間の執務実績を見ると、民生問題では大きな改善は見られないが、学生らのデモを穏便に処理して危機管理した政治パフォーマンスは評価すべきだ。
米国家安全保障局(NSA)による個人情報収集の手口を告発したエドワード・スノーデン氏が香港滞在後、ロシアへ亡命する外交処理判断を行った点も功績だ。中国政府のメンツを保ち、米国にも配慮した。
――これまで普通選挙改革案の可決を目指して大規模な署名活動をしてきた「愛港之声」は今後、どんな活動を行うのか。
反政府派(民主派)は与野党逆転による政府転覆を目指している。しかし、香港人の最大関心事は市民の生活に関わる民生問題だ。「愛港之声」としては今後、民生問題を中心に活動を展開したい。11月22日の区議会議員選挙には人を派遣しないが、親中派へのサポートは行う。来秋の立法会議員選挙については検討中だ。
――民主派には香港独立論や排他的な本土主義が出てきて11月に行われる区議会議員選挙での出馬も取り沙汰されている。民主派はまとまることができるか。
香港人は非常に現実的だ。大多数は主権が中国になった時点で中央政府を転覆させることは不可能だと悟り、中国共産党と共生するしかないと思っている。
中国人富裕層が香港で不動産を購入し、地価が上がって香港市民の居住環境が悪化したり、優秀な中国人学生が香港に留学することで香港人学生の進学が不利になるなどの不満を抱き、本土主義に走る一部の若者もいる。自分たちの問題を他人に転嫁し、自縄自縛に陥っているので、一般市民とは距離を置く浮いた形になっている。そのために行動も考え方も過激化し、世論の支持を得られない。反政府派(民主派)の一部に過激な急進派が出てくれば、反政府派の求心力は削がれるだろう。
(香港・深川耕治、写真も)